夢小説

□帝国ノ狐と点取り屋
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「ベフォッ!」

「どうした染岡竜吾。先程の威勢は実家に帰ったか?」

「うるせぇ!」

「元気じゃないか」


 この二人のやりとりは、既に雷門サッカー部では見慣れたものとなっていた。それはもう、サザエさんの最後のじゃんけんコーナー並に。

 先程、顔面にボールの一撃を受けた染岡竜吾は、ゴール前に悠然と立つ奇妙な少年を睨み付けた。ちなみに、染岡の顔面にボールを当てたのは彼だ。

 奇妙、と言うのは彼の格好。帝国学園指定の制服に顔には狐の面。顔を覆っている面の左側は、更に長い前髪で隠されている。

 彼の名は東京。帝国学園サッカー部のマネージャーである。

 帝国と練習試合をして以来、彼はちょくちょく雷門サッカー部に顔を出しに来るのだが、来る理由を聞けば、「気に入ったから」。

 誰もが認める策略家で他校から尊敬と畏怖の念をこめて『帝国ノ狐』と呼ばれている彼が雷門に通い始めた当初、偵察か?と部員達は怪しんでいたが、だんだんその疑念は薄まっていた。

 キャプテンである円堂は、「あいつ、純粋にサッカーが好きってわかる」ってな理由で気に入ったからだ。

 キャプテンがそう言うのなら、と部員達とマネージャー達は、京を受け入れた。


 しかし、染岡は違った。


 京が嫌な奴じゃないとわかってながらも100%は信用出来なかった。というか、気に入らなかった。

 ある日、彼は京に勝負を挑まれた。円堂が守るゴールを多く破った方が勝ち、いわゆるPK戦だ。

 結果は京の圧勝。マネージャーってのは嘘だろッ! 誰もがそう思った。

 それ以来染岡は、京をチームメイトの豪炎寺に次ぐライバルと見る事になった。

 今回の勝負の内容は京が決めた。それは、


「オレからゴールを奪え」


 そう淡々と言うと京は、制服のズボンのポケットから取り出したグローブをはめた。
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