夢小説
□帝国ノ狐と同姓同名
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先日の雷門との練習試合以来、東京は雷門サッカー部に興味を持っていた。
今まで見てきた他の学校は、帝国からすぐにボールを奪われてしまったり、ボールを奪い返せなかったり、ゴール付近に近付けなかった所もあった。どのチームも共通していた所は、試合が始まる前から『帝国に勝てっこない』と諦めていた。
しかし、雷門サッカー部は違った。一人一人のプレイは未熟ながらも、諦めずに最後まで戦おうとしていた。
それはベンチで指示を出していた京の興味をわかせた。久々だったのだ、ここまで自分をワクワクさせたチームは。
今日は雷門サッカー部の様子見。雷門中の敷地をまたいだ瞬間、京はかなり目立った。すれ違う生徒は皆、一度振り返って見直していく。
それは当たり前の事で、京は帝国学園の制服のまま、しかも顔には白い狐の面、更に左側の顔を長い前髪で隠している。
この面は、偵察の時や他校や公式での試合で付けるように影山から貰ったものである。
最初は「頭脳派のオレに対する嫌みか」と嫌々付けていたが、この面のお陰で『帝国ノ狐』と周りから畏怖の念をこめて呼ばれ始めてからは、まんざらでもなくなってしまった。寧ろ、本人はノリノリだったりする。
暫く歩いて、京は立ち止まった。そしてキョロキョロと周りを見回す。
(困った…)
サッカー部の部室が見当たらないのだ。
只今京がいるのは様々な部活の部室が設けられている部室棟。
マンモス校である雷門中は様々な種類の部活がある。部室棟をとりあえず一通り回ってみたが、サッカー部の部室が見当たらないのだ。
(見落としたか?)
と京がもう一周するかと思った時だ。
「どうしたんだ?」
後ろから急に声をかけられた。
京が振り返ると、そこには雷門の男子生徒が一人いた。世間的に言う、フツメンである。
男子生徒は狐の面に一瞬驚いていたが、
「お前、帝国学園か?」
と京の制服を珍しそうに見ていた。
「そうだ。そう言うキミは、雷門中の生徒だな」
「いや、ここ雷門中だから…」
京の言葉に苦笑した男子生徒は、
「さっきからうろうろしてるみたいだけど、もしかして迷っているのか?」
「ああ」迷わず頷く京。
「何処に行きたいんだ?」
「サッカー部」
「そうか。案内するよ」
なんとこの男子生徒はサッカー部の部室に案内してくれるそうだ。
その優しさに京は面の下で小さく微笑んだ。
「感謝する」
「いいって。それより、その狐の面は趣味か?」
「そんなものだ」