夢小説
□マネージャーのお仕事@
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「鬼道」
「何だ?」
「あれ」
準備体操を終えた後、佐久間 次郎が指を指した先は、ベンチであった。
鬼道 有人はそこを見ると、ベンチの陰に人が隠れるようにしゃがんでいた。帝国学園指定の制服に身を包み、長い前髪で左の顔半分を隠している、そんな少年だ。
やれやれと言いたげに鬼道はため息を吐くと、「東」と一言。
びくっと少年の肩が動く。
しかし、そこからは何も変化はなく、呼び掛けられた事が最初から無かったかのように少年は隠れていない右目だけでジッと鬼道達を見続けていた。
「……またか」
「相変わらずだな、東」
彼の名前は東 京。
つい最近からああやってサッカー部を見に来ている。
最初部員達は、あの怪しい行動に「他校のスパイか?」と疑っていたが、試しに鬼道が練習に誘ってみれば、
「……サッカーは嫌いだ」
と冷たい視線を向けながら即答、帝国サッカー部の監督である影山が誘えば、「死ね」の一言だった。
しかし、あのように毎日、朝練にまで来ている所を見ると、本当にサッカーが嫌いなのか、首を傾げたくなる。
先程から変わらず他のメンバーを見つめる京。
部員達は、それぞれアップを始める。
毎日だとすでに帝国サッカー部の練習風景の一部になってしまっているので、「ま、いいか」と片付いてしまうのだ。もちろん、鬼道達もそうである。
しばらくすると、影山が現われ、京が隠れているベンチに腰を掛けた。
その途端に、京の視線が彼へと向けられ、険しいものとなる。一段と冷たく、憎しみがこもっている瞳。
「……」
「また来たのか、東」
「……ふん」
影山の言葉に鼻で笑うだけで、それ以上何も口にしなかった。
影山もまんざらでもなさそうで、普段通りに部員達の練習を眺めていた。
只今シュート練らしく、佐久間が鋭いシュートを放ち、ゴールでは源田 幸次郎が構えている。
佐久間のボールがゴールポストギリギリを狙うが、
「『パワーシールド』!」
強く地面を叩きつけて発生させた衝撃覇によって跳ね返された。
しかし、ボールはそのまま威力を弱め転がり落ちるのではなく、佐久間が放った威力のまま跳ね返り、それは影山に向かっていた。
「総帥!」
練習を指示していた鬼道が、即座に駆け寄ろうとするが、間に合わない。影山と正反対の場所にいたせいだ。
グラウンド全体に、凍ったような戦慄が走る。