夢小説
□帝国ノ狐と点取り屋
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(コイツ、キーパーも出来るのかよ)
と思いながらも染岡は思い切りボールを蹴った。さすがは雷門の点取り屋、鋭いシュートである。
しかし、京は迷う事なくそれに飛び付いた。キーパーとしては、文句ない動きだ。
「少しはやるんじゃねーの?」
「雷門の点取り屋はこんなものか?」
この挑発に染岡は食い付いた。元から気が長い方ではない彼は、容赦なくシュートを打つ。
京は小柄だが、頭上のボールにもしっかり飛び付く。その接戦は周りの注目を集めていた。
14回目のシュートをキャッチして、京はそのボールを蹴り返した。
それが見事に染岡の顔面に当たって、冒頭に至る…。
「全く、貴様をからかうのは楽しいな」
「はぁ? 何言ってやがる!?」
「そのままの意味だ。よし、次は必殺技使ってみよう」
いつでも来いと言うように、京はグローブをはめた両手を叩き合わせて、染岡を見据えた。
「次で終わらせよう」
「上等だぁ!」
京の挑発にまたも軽々と乗ってしまった染岡。感情に任せたまま彼が右脚を後方へ大きく蹴り上げた。必殺シュート『ドラゴンクラッシュ』の構えだ。
「ドラゴンクラッシュ!」
全ての力を結集させた右脚が蹴ったボールは、真っ直ぐとゴールに突進しようとする。それはドラゴンのような気迫を見ている者に感じさせた。
しかし、京が感じたのはピリピリと針の先程度の気迫。
「その程度か」
染岡のシュートの評価を短く吐き捨てると、京は大きく両手を広げた。
その瞬間、染岡や二人の勝負を見守っていた部員達は京の背後から立派な狐のような尻尾が二本現れたのを見た。黄金に輝くフサフサな二本の尾。
ドラゴンが狐を食い殺そうとする!
京が真っ直ぐボールを見つめた。
「二尾・双剣の舞」
二本の尾はドラゴンを絡め取り、握り潰した。
ボールは京の両手に収まっていた。