呪術師の娘

□シャムロック編
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▽三十三章 出会いは巡る

 魔術師の街、シャムロック。
 魔術師養成学校、魔術書専門図書館、魔術師協会本部などがある。
 魔具やアイテムを造る魔術師も多くが居を構える。
 ちなみに、魔術師協会とは、僧侶で例えると大聖堂に近いものらしい。

 そんな街の冒険者ギルドに、私たちは訪れていた。
 もちろん、仕事を探すために、である。
「すみません。」
「はい。」
 依頼の受付カウンタに座っている中年の男性に目が合う。
 すると、男性は大きく目を見開いた。
 そして尋常ではないくらい顔から汗が流れる。
 おまけに男性は小刻みに震えていた。
 これは大変だ。
「あの、大丈夫ですか?」
 私が声をかける。
 すると、男性は一瞬白目を剥いた。
 それから口を大きく開ける。
 そして。
「申し訳ぇぇぇぇぇぇぇございまぁぁぁぁぁぁせんでぇぇぇぇぇしたぁぁぁぁぁあ!」
 と、素っ頓狂な叫び声を上げた。
「え、あ、あの!」
「ど、どうか御命だけは、御命だけは!」
 土下座まで始める中年の男性。
「リズ、どうした?」
「レオ、何だかこの人が変で――。」
 私はレオナールに駆け寄る。
 レオナールは土下座している男性を一瞥すると、隣の受付カウンタの女性に近づいた。
 その女性も顔が引き攣っている。
「このおっさん、どうしたんだ?」
「申し訳ございません。私にはわかりかねます。」
 それはそうだろう。
「私が担当を変わってもよろしいでしょうか?」
「はい、もちろんです。」
 土下座している男性は他の職員に助け起こされる。
 そして怯えた目をずっと私に向けていた。
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