呪術師の娘
□来たる編
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▽二十七章 大女優は来たる
私たちは炭坑の町、レーゲーテを訪れていた。
レーゲーテはサファイアが採れるため、今栄えている町である。
私がウォルソ村に帰るには、軌道を少しそれた町だ。
だがなぜレーゲーテに立ち寄ったかというと、フェリオの強い希望があったからである。
なぜかと言うと、それは――。
「ここが僕のお父さんが産まれた町なんですね。」
フェリオは眩しそうに目を細める。
そう。
ここは僧侶のトップとも言える、聖都マリステの大聖堂の大司教であり、フェリオの養父でもある、ロア・ルーソの産まれ育った町なのであった。
「とりあえず飯でも行くか。」
「はい!」
フェリオは嬉しそうに頷いた。
「フェリオくん、来れてよかったね。」
私がそう言うと、フェリオは愛らしい笑顔を私に向けてくれる。
「はい! これも、レオナールさんが僕を連れて来てくれたお陰です!」
「――そこは感謝しなくていいと思うけど。」
それでもフェリオは太陽のような笑みを浮かべていた。
何も考えずにレオナールに付いて行っていると、レオナールは酒場に入って行った。
昼から飲むつもりなのか。
多少ためらったが、私もレオナールに続く。
と、そこは酒場なのに、昼とは思えないくらい賑わっていた。
レオナールは迷わず空いているテーブル席に腰掛けると、煙草に火を点ける。
私たちもそこに座ると、ウェイターがやって来た。
「いらっしゃいませ。お飲み物は何になされますか?」
「ビール。」
「えっと――。アップルジュースで。」
「えっと、えっと。」
フェリオが慌ててメニューを広げる。
「えっと、あの、僕もアップルジュースで。」