呪術師の娘
□娘と復讐編
1ページ/27ページ
▽十六章 お金は大切に
私たちは今、治安の悪い都市、商業都市マルシアに来ていた。
商業都市とは名ばかりの、ギャンブルで栄える夜の町。
なんでも商業都市イラキオができたことにより、商業都市としての役割はイラキオに流れ、マルシアに残った多くの人と土地がギャンブルの都市としてこの地を栄えさせたらしい。
フェリオはこの土地に来るのを頑なに嫌がった。
彼はこの都市の治安が悪いのを承知していたからだ。
しかしレオナールは無理矢理私たちをこの都市に連れて来た。
今ならわかる。
なぜレオナールがここに来たがっていたか。
ギャンブル。
彼は冒険者として仕事をこなす傍ら、毎晩カジノに出かけていた。
レオナールの親族というわけでもないし、あまり咎めることはできないが、できたら身を滅ぼさない程度にしてほしいものだ。
そんなことを思いながら、依頼のポーションを調合していればもう深夜だ。
そろそろ寝ようか。
そう思った時、ドアがノックされた。
「リズ、俺だ。」
「レオ?」
カジノに出かけたのではなかったのか。
「話がある。俺の部屋に来てくれ。」
「――うん。」
深夜に男性の部屋を訪れるのはいかがなものか。
少し、本当に少しだけ考えたが行くことにした。
レオナールに私を襲う気があればチャンスはいくらでもあった。
そう結論づけたからだ。
レオナールの部屋に行くと、眠たそうに目を擦っているフェリオがいた。
早寝早起きを得意とするフェリオのことだ。
こんな時間に起こされることはあまりないのだろう。
「さて――。」
レオナールはどっしりとベッドに腰を下ろす。