呪術師の娘

□人形編
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▽十二章 人形は紅で目覚める

 フェリオが目覚めた時には私たちはかなり聖都マリステから離れた場所にいた。
 そして、レオナールは帰りたいなら一人で帰れ、一緒にウォルソ村まで来るなら帰りは保証すると言った。
 ついでに言うとフェリオは一文無しだった。
 結果、フェリオは私たちの旅に加わることになった。

 そして冒険者ギルドのある町まで徒歩で来て、今に至る。
 この町はアケルターといい、そこそこ工芸品の町として栄えているようだった。
「とりあえず、ギルドに行くか。」
「じゃあ僕は宿の手配をしときます。三部屋でいいですか?」
「取れそうならそれで頼む。ギルドの前で待ち合わせにするか。」
「じゃあ私は――。」
 どうしようかな。
 レオナールかフェリオに付いて行ってもいいが、それでは役立たず丸出しだ。
「――やっぱりリズが宿でフェリオは買い物してろ。」
「うん、そうだね。」
 フェリオも誘拐で連れて来たので着の身着のまま。
 替えの服もなければ旅の準備も何もない。
「でも――。リズさん、やり方わかりますか?」
「――たぶん。」
「子供じゃないんだ。大丈夫だろ。」
 少し不安だがやってみよう。
 きっとできる。

 レオナールはフェリオに何枚か金貨を渡した。
 金貨を握りしめているのは危ないと判断したのか、慌ててフェリオはそれをポケットにしまう。
「ありがとうございます。」
「いや、俺が出すのが当然だしな。」
 レオナールは少し肩を竦めた。
「リズ、ちゃんとギルドが斡旋してる宿にしろよ?」
「うん。確か、入口にギルドのマークがあるんだよね?」
「そうだ。」
「じゃあ行って来るね。」
「気をつけてくださいね。」
「ありがとう。」
 とりあえず私は町の入口の案内板まで戻る。
 まずは宿の場所を探さないと。
 案内板を見ていると、宿のマークの隣に冒険者ギルドのマークが付いているものを発見した。
 ギルドが斡旋している宿、ということだろうか。
 とにかく行ってみよう。

 多少は迷ったものの、立て看板がいくつかあったためになんとか宿に辿り着くことができた。
 宿のプレートの下にギルドのマーク。
 たぶん、この宿で間違いない。

 中に入ると中年の女性がけだるそうにカウンターに座っていた。
「いらっしゃい。」
「すみません、部屋を取りたいんですけど――。」
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