呪術師の娘

□六十二章 その頃三人は
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 私は弱虫だと思う。
 考えても考えても、答えが出せなくて。
 そして、考えることさえ放棄して。

「違うよ! そんな解釈じゃ術は発動しない。」
「でもリズの解釈にも穴がある。」
「穴はあるかもしれないけど、リジィの解釈は根本が違う。」
 リジィと術式についての討論に華を咲かせていたりする。
「そんなことないね。第一リズの解釈は楽観的仮説が多すぎるんだよ。」
「リジィの解釈だって理論の組み立てが雑な上に根拠が少ないんだよ。」
 楽しい。
 私が最低だというのはわかっている。
 でも、こうやって呪術について語り合うのは楽しかった。
 リジィとの間に考え方の隔たりがあるのはどうしようもない事実だけれども。

「リジィ、リズ、まだその術式のことやっていたのかい?」
 リジィの祖母――セスラ・ウォルターというらしい――が顔を覗かせる。
「あ、セスラさん。」
「邪魔しないでほしいんだけどなぁ。」
 リジィは人を小馬鹿にするように肩を竦める。
 またこの男は。
「大事な話なんだよ。」
「へぇ。」
「リッカの報告なんだが、無理矢理この里の結界を破ろうとしている三人組がいるらしくてね。」
「ふぅん。」
 三人組とな。
 真っ先に思い浮かんだのは、レオナールとフェリオとレオノーラ。
「しかも、その中の一人は結界石を片っ端から素手で叩き壊しているらしい。」
 レオナールで決定だ。
 私は勢いよく立ち上がった。
 だが、リジィは涼しげな顔をしたまま。
「私、帰る!」
 するとリジィは意外そうな顔をした。
「帰るの?」
「絶対暴れてるのレオだし!」
「放っておけばいいじゃん。」
 セスラがリジィを睨みつける。
 けれどリジィは完全に無視だ。
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