呪術師の娘

□五十八章 代償は易くなく
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 レオナールとクレイシアの鬼ごっこが終わった時。
 珍しくクレイシアはその場にいた。
 いつもはいつの間にか消えているのに。
 子供返りでもしたかのように、何も喋れないアスナを肩に背負う。
「迷惑かけたな。」
「自分の妹くらいちゃんと管理しとけ。」
「他のを相手していたら見落としていた。」
「爪が甘い。」
 レオナールがそう言うと、クレイシアは不機嫌そうに目を細めた。
「アスナ一人に手こずったお前に言われたくない。」
「あ?」
「――。」
 不穏な空気が流れた。
 まさに一触即発。
 またいつ追いかけっこが始まってもおかしくない空気だ。
「クレイさん!」
 フェリオがクレイシアの服の裾を引っ張る。
 クレイシアは熱い視線でフェリオを見つめて、レオナールに向き直る。
「今日はやめておいてやる。」
「は?」
「レオも喧嘩売らないでよ――。」
 私が若干疲れ気味に言うと、レオナールは盛大に舌打ちした。
「行くぞ。」
 レオナールはクレイシアから完全に背を向ける。

 一方では、レオノーラはいまだに座り込んでいるリジィに声をかけた。
「動けそうですか?」
 するとリジィは肩を竦めた。
「悪いけど無理だね。」
「じゃあ私がおんぶします。」
「君に背負われるなんて屈辱的だけど、仕方ない。」
「もう。」
 レオノーラはぷっくりと頬を膨らませる。
 だけどそれだけで、軽々とリジィを背負った。
 レオノーラに背負われるリジィ。
 何だか奇妙な図である。

 その様子を確認して、レオナールはフェリオを促し歩き出す。
 私もレオナールの後を追おうと歩き出した。
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