呪術師の娘

□五十七章 奇襲の意味は
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 恐らく、リジィとレオノーラと過ごすであろう最後の日。
 どういうわけだか、私たちは魔物の群れに囲まれていた。
 うねうねとした職種を持つ、口が付いた植物の魔物。
 先ほど聞いた話によると、ワンダフルフラワーという魔物らしい。
 どこかワンダフルなのか、ぜひお聞きしたいところである。
 見るだけで吐き気をもよおすワンダフルフラワーの群れ。
 私はレオナールとレオノーラに守られた安全な場所で、吐かないようにうずくまるのが精一杯だった。
 ちなみに、私と同じく戦闘では役立たずのリジィは冷たい目でワンダフルフラワーの群れを見ている。
 ワンダフルフラワーにはレオナールの拳は相性が悪いらしく、中々手こずっているようだ。

「フェリオ、ヒール!」
「はい!」
「後でアンチポイズンお願いします!」
「はい!」

 必死に戦ってくれている三人を見て、吐き気に耐えているだけの自分がとても情けなく感じる。
「――ねぇ、リズ。」
「何?」
「ワンダフルフラワーの体液ってさ、惚れ薬の材料になるんだよ。」
「そうなの?」
「そう。」
 リジィは木の枝で陣を描いている。
 私はその陣を見たことがない。
「この山の魔物は全部薬の材料になるんだよ。」
「詳しいね。」
「呪術師だからね。」
 私は呪術師だけど、知らなかった。

 リジィは描いた陣を消す。
 どうやら意味のないものだったらしい。
「――。」
「――。」
「――。」
 それから私たちは無言だった。
 無言のせいか、時間が流れるのが遅く感じた。

 レオナールが最後のワンダフルフラワーの触手を引きちぎった頃。
 私とリジィはとんでもなくだれていた。
 三人には本当に悪いと思う。
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