呪術師の娘

□五十五章 靴下と掃除
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 今日の何回目かの休憩にて。
 川辺で休むことにした私たち。
 私とフェリオとレオノーラで肩を並べて小川に足を浸していた。
 疲れた足に、ひんやりとした小川の流れは心地好い。
「――そういえばさ。」
 言うだけ。
 本当に言うだけ。
 私は朝からずっと言えなかったクレイシアの頼みを口にする。
「フェリオくん。」
「はい?」
 フェリオの笑顔。
 心がとても痛い。
 少しだけ、本当に少しだけ泣きそうである。
「クレイシアさんがさ、フェリオくんの靴下か靴、欲しいって。」
 たちまちフェリオの顔が青ざめる。
 ごめんね、と心の中で謝ることしかできない。
「今日の夜にさ、外に出て、それで、魔物から助けてもらって。」
 するとフェリオのかわいらしい顔の眉間にシワが刻まれる。
「リズさん、そんなことしたら危ないですよ!」
 ぷりぷりと頬を膨らませるフェリオ。
 こんな時でもフェリオはかわいい。
「そうですよ。女同士だし、今度からは私に声をかけてください。」
「――ありがとう。」
 でもそれはリジィのせいで、なんてとても言えない。
「本当に、昨日のは反省してます。」
「反省してるのならいいですけど。今度から絶対にやっちゃダメですよ!」
 私はフェリオの言葉に頷いた。
 本当に昨日のは私が悪い。
 軽率だった。
 でも、リジィも悪い。
 どれだけそう言いたいことか。
「それで、フェリオくんが嫌ならいいんだけど、クレイシアさんに頼まれて。靴下か靴。」
 するとフェリオは困ったような顔をして首を傾げる。
「リズさんを助けていただいたし、それくらいはしたいですけど――。」
 フェリオは自分の足元に目を落とす。
 私もつられて目を落とすと、小魚が泳いでいるのが見えた。
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