呪術師の娘
□五十二章 恋話は時に
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夜。夕食を済ませた後。
リジィはさっさと寝袋に包まってしまい、私とレオナール、フェリオ、レオノーラは焚火を囲んでいた。
今日も野宿である。
時たま、小枝を折ってレオナールが焚火の中に放り込む。
パチパチと音を立てて火が燃える。
静かで、安らぐ空間で。
私は焚火の音に耳を傾けていた。
「――フェリオさんは。」
唐突にレオノーラが口を開いた。
目を向けると、レオノーラの顔はとても強張っている。
まるで何かに対して怒りでも抱いているような迫力がある。
どうしたのだろうか。
不安そうに瞳を動かすフェリオ。
目が大きいので隠そうとしても丸わかりである。
「その――。」
レオノーラの意図がわからなくて私は首を傾げる。
「好きな女性のタイプとかは。」
わかった。
レオノーラはフェリオを通して、さりげなくレオナールの好みの女性を探ろうとしているのだ。
が。
事情を知っている私には、レオノーラの緊張とか、焦りとか、そういった感情が手に取るようにわかった。
一方フェリオはきょとんとした顔で不思議そうに瞬きを繰り返しており、最終目的であるレオナールは肩を震わしていた。
笑いを堪えているのが見え見えである。
「私も気になる。」
これは別に、レオノーラを補助してあげようとかそういう気持ちではなかった。
単なる私の好奇心である。
「り、リズさん!?」
フェリオの慌てようと言ったら。
とてもかわいい。
今日も世界はフェリオのかわいさで安泰だ。
「しかしフェリオが女と付き合ってもただのレズだな。」