呪術師の娘

□四十四章 初めての山越えは
1ページ/2ページ

 ロッテ峠は、私にはとても厳しい。
 半日歩いただけでとてもへとへと。
 私のために何回休憩してもらった頃。
 フェリオでさえ元気なのに。

 日も傾きかけた頃。
 レオナールは言った。
「野宿だな。」
「え?」
「山小屋に着けそうにないから仕方ないだろ。」
「えぇ!」
「野宿も危険ですけど、夜間行軍の方が危険ですからね。」
 何でもない風に言うフェリオ。
 こんなにかわいいのに、フェリオの方が私より余程冒険者らしい。
「フェリオ、この辺りで野宿できそうな場所は?」
「地図では近くに川があるので、そこがいいんじゃないでしょうか。」
「そうだな。」
「川はこっちです。」
 フェリオが歩き出し、それにレオナールが続く。
 私も重い足を引きずって歩き出した。
 とても疲れているので、二人に付いて行くのもやっとだ。
「リズさん、大丈夫ですか?」
「――うん。」
「おんぶしてやろうか?」
 蘇るのは、色々な思い出。
 私、結構レオナールにおぶわれているかも。
「嫌。」
「そうか。」

 やっと目的の川に着くと、私はその場に座り込んだ。
「もう駄目!」
「ったく。だらしないな。」
「仕方ないですよ。女の子だし、初めての山越えですから。」
「フェリオくん――。」
 レオナールは厳しくても、フェリオは私の見方をしてくれる。
 私は黙ってフェリオを抱きしめた。
「り、リズさん!?」
「フェリオくんは本当に優しいねぇ。」
「お前ら、レズってないで晩飯の準備するぞ。」
「はぁはぁはぁはぁはぁ!」
「――。」
 どこから聞こえてくるかわからない、この気持ち悪い息遣いも慣れたもの。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ