呪術師の娘

□四十三章 私と彼
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「もう行くの?」
 火傷の跡がまだ目立つエルゴの横に寄り添うように立ち、ジェシカは残念そうに言った。
「はい。早く父と母に会いたいんで。」
「そう。ユリアに会ったらよろしく。」
「わかりました。」
「じゃあ気をつけてね。」
 ひらひらとジェシカは手を振る。
「ジェシカさんとエルゴさんもお元気で。」
「ありがとう。君たちも無理するんじゃないよ。」

 魔術師の街シャムロック。
 短期間の滞在なのに色々あった街だ。
 母の旧友に出会ったり、母の正体を知ったり、大きな事件に巻き込まれたり。
 一生忘れることのできない街になるだろう。

「ねぇ、レオ。次はどこ行くの?」
「次はダクラの村で一泊してから峠越えだな。」
「峠越え?」
「ロッテ峠は険しくて馬車が走ってませんからね。歩いて行くか、海路で大きく迂回するしかないんですよ。
「えー。」
「文句言うな。」
 そんなこと言われても文句の一つや二つくらい言いたくなる。
 これに関して、全面的に悪いのはレオナールなのだから。
「峠でちょうど、聖都マリステと王都の中間だ。」
「じゃあやっと折り返し地点ってところだね。」
 長かったような短かったような。
 レオナールに土下座されたのは昨日のことのように思い出せるのに、父母には長い間会っていないような気がする。
「そういえば、どうしてリズさんはレオナールさんと旅をしているんですか?」
 フェリオも信頼できる仲間だし、そろそろ言ってもいいかもしれない。
 レオナールの株は落とすことになるが。
「それは「あの!」
 言葉を遮られ、その声の方を向くと物凄い美人がいた。
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