七色の輝きを求めて
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「へぇ〜、ここがヒワダタウンかぁ」
繋がりの洞窟を抜けたカエデは、ヒワダタウンへやって来ていた。
「やっぱりここまで来ると、町の雰囲気が違うのを感じるなぁ…」
そう呟きながら、カエデは町をキョロキョロと見渡す。ボールの外にいたアラシ、タチ、タピーもカエデに合わせてあちこちに顔を動かす。
そんな時、何か気になるものでも目に止まったのか、タチは一点の方向を見つめたまま動かなくなる。
それに気付いた他のポケモン達とカエデも、タチ同じ方向を見る。
「……?あれは…井戸??」
カエデ達の視線の先にあったもの。
それは、どこか懐かしい雰囲気を漂わせた少々大きめで古そうな井戸だった。
暫くその井戸を見ていたカエデは、「あ」と何かを思い出したかのような声を上げながら、ポケギアのマップを見始める。
「ぇーっと……ぁ、あった。<ヤドンの井戸>、か…」
ポケギアに表示されているヒワダタウンの名所とも言える、<ヤドンの井戸>。ポケギアを見つつ、カエデは井戸に近付く。
そして、井戸の前にある一つの看板に目が止まった。
昔ジョウト地方で日照りが続き雨が降らなかった頃、「とあるヤドンが"欠伸"をした瞬間、雨が降り出した」という記述があるのだ。その事もあり、特にここヒワダタウンにある<ヤドンの井戸>は神聖な場所とされている。
看板の解説文を一通り読んだカエデは、ふと、とある事を思い出した。
「そういえば、前読んだ父さんの書斎の本にそんな事が書いてあったような……」
そう。今では行方の知れないカエデの父の書斎の本に載っていた、ジョウト地方についての記述だったのだ。
記述の事と同時に父親の事も思い出したカエデは、どこか遠くを見つめているかのような目をする。
「っとに……今頃どこで何してんだか。馬鹿親父…」
そう一言漏らすと、くすりと笑う。
すると、そんなカエデの後ろから、少々懐かしい声が聞こえてきた。
「……カエデ?」
「?あっ、トウヒじゃん!」
カエデの後ろから声を掛けたのは、旅に出たその日から一度も会う事のなかったトウヒだった。
「久しぶり〜!元気だった?」
「……旅に出てからまだそんなに経ってない、けど」
ある意味正論とも言えるトウヒの言葉に対し、カエデは苦笑いしか出来ない。
「あはは……で?ジムに挑戦するって言ってたけど、調子の方はどうだ?」
「まあまあ……応、キキョウシティのジムは制覇した」
「早くも一つ目のジム制覇か。で、次はどこのジム?」
「ここ」
「……へ?」
あまりにも即答過ぎるトウヒの返答に、カエデは目を点にしながらトウヒを見る。
唖然としているカエデに対し、トウヒはいつもの表情を崩さない。
「……だから、ここ。キキョウシティから一番近いジムがあるのが、ここヒワダタウンだから。それで……着いたらカエデを見かけたから、話しかけた」
「あー、なるほど…」
トウヒの確な説明にカエデは納得の色を見せる。
「…?となると…仲間が増えてたりする、とか?」
「ああ……それなりには、捕まえたよ」
「へぇ〜。んじゃ見せて!私のポケモンも紹介するからさ!!」
「…分かった」
そう一言言うと、トウヒは腰に付けていたモンスターボールを二個出し投げる。
ボールの中から出てきたのは、アリゲイツとズバットの二匹だった。
その二匹の内の一匹、アリゲイツを見たカエデは、思わず驚いた顔をしてしまう。
「もうワニノコ進化したのか!?」
「結構集中的に……鍛えたから。ズバットは、キキョウのジムリーダーが鳥ポケモン使いっていうので、捕まえた」
トウヒの説明にまたカエデは納得し、今度は自分のポケモン達に目をやる。
「こっちが私のポケモン」
「ヒノアラシとオタチ、バタフリー……バタフリーは進化したばかりみたいけど」
「オタチはタチで、バタフリーはタピーっていうんだ。タピーは昨日進化したばっかなんだ」
先程とは逆で、今度はトウヒがカエデの言葉に納得する。
「それで、トウヒはこれからすぐにジムに行くのか?」
「……いや、まだ行かない。確実に勝てるように…ポケモン達をここで、鍛えて行こうと思う」
「この井戸で?でもヤドンって、あんま戦闘向けじゃないんじゃ…」
ヤドンとの戦闘に関して疑惑が浮かび上がるカエデに対し、トウヒはゆっくりと答える。
「ヒワダのジムリーダーは、防御系と…スピード系の虫ポケモンを使うらしいんだ……そうなると、こっちに求められるのはスタミナ…ここのヤドン達は耐久性に優れているから、短期間バトルするだけでも少しは違うと、思って……」
「へ、へぇ〜……」
曖昧さが目立つ言葉をトウヒに投げかけながら、「(トウヒはバトルってなると、他とは比べものにならないくらいこだわる所があるからなぁ…)」と、カエデは思わず内心で思ってしまった。
そこがまた、彼らしい一面でもあるのだけれど。
「………カエデも、一緒に来る?」
「えっ、私も?」
「…バタフリーに進化したてだと、まだバトルに慣れしてない所もあるかもしれないし……ダメか?」
「あっ……全然ダメじゃない!やろうぜ、バトルの特訓!!」
いつもと変わらない明るい笑みを浮かべながら返答するカエデに対し、同じくいつもと変わらない無表情に等しい顔で受ける。
そして二人は、ポケモン達とゆっくりと井戸の中へ降りて行った。
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