小説1
□キスしてなんて言わないから
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「 何やってんの、」
「 先輩、! 」
今日は、サボり日和。爽やか
な風が私に吹き付ける。いち
ごミルクと携帯片手に黄昏て
いると、聞き覚えのある声。
「 サボり? 」
「 見ての通りです、」
「 悪い奴だなー! 」
先輩は、私の前に来て頭をぐ
しゃぐしゃにした。あーあ、
今日は、上手くセットできた
のになあ、なんて思っている
間に先輩は、ちゃっかり隣に
座って、牛乳を飲んでいた。
「 先輩もサボりじゃん 」
「 えー、なんか言った? 」
「 何でも無いです 」
先輩は可愛く笑うと、手に持
っていた牛乳を一気に流し込
んだ。先輩の彼女はずるい。
こんなに可愛い笑顔を独り占
めできるなんて。それに先輩
は運動も出来て、勉強も出来
るもんだからモテてる訳で。
私も先輩に思いを寄せてる人
の内の、1人だったりして。
私は幼なじみの相葉くんの紹
介で先輩と仲良くなったんだ
っけ。世界は狭いんだなあ、
「 あ、そういえば 」
「 何ですか? 」
「 、誕生日でしょう? 」
「 え、誰の」
「 誰って、あなたしかいない
でしょうよ、」
自分の誕生日も忘れるなんて
やっぱり馬鹿ですね、なんて
サラッと暴言吐かれちゃって
るけど、そんな事より先輩が
私の誕生日を覚えててくれた
事がたまらなく嬉しかった。
「 そうですよね、」
「 何か欲しいもんある? 」
「 そっ、そんな欲しい物だな
んて、滅相も無いです! 」
「折角、ケチで有名な二宮が
あげるっていってんのに 」
「 でも、悪いですよ 」
「 いいから、」
二宮先輩は早くーと、足をパ
タパタさせていた。それすら
も可愛くて、愛しくて仕方な
かった。あー、私結構重症。
「 じゃあ、」
「 うん、なに? 」
「 抱き締めてください 」
「 え? 」
「 あ、すみませ、! 」
「 いいですよ、」
「 へ? 」
「 ほーら、」
呆気にとられていると、私の
手首は、先輩の手に掴まれて
いて、気が付くと先輩の腕に
埋もれていた。先輩の鼓動が
体温が、直に伝わってくる。
「 せ、んぱ 」
「 ねえ、好きでしょ? 」
「 え、」
「 俺の事好きでしょう? 」
「 、なんで 」
「 俺は、好きだよ 」
「 誰を、ですか? 」
「 あなたに決まってるでしょ
う、」
私はパニックで回らない頭を
フル回転させて、状況を何と
か飲み込もうとした。先輩が
私を好き?そんなはずない。
だって、先輩には彼女がいる
んだから。まさか、全部夢?
「 いたっ、! 」
「 何やってんの、」
頬っぺたをつねってみたけど
痛い、凄く。これは現実、?
「 だからさ、」
「 俺と付き合いません? 」
「 先輩彼女は、」
「 え、かのじょ? 」
「 いるんじゃ、」
「 いませんよ、生憎 」
先輩はまた、んふふっと、笑
った。相葉くんの嘘つき、!
絶対に、許さないんだから、
「 で、返事は? 」
「 私でよかったら 」
「 あんたがいいの、 」
「 は、い 」
「 これだけでいいの? 」
プレゼント、先輩は私の10セ
ンチ上から私に問いかけた。
先輩と付き合える事になって
抱き締めて貰って。もうこれ
以上何もいらない、だから、
このままずっと抱き締めて。
ねぇ、キスしてなんていわないから
( 幸せすぎて可笑しくなる )
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