小説1
□繋いだ手の平
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梅雨も開けて、すっかり快
晴の日々。もう夏だなあ、
窓から外を見ると、沢山の
烏が飛んでいた。今日もま
た、嵐の如く、奴が来る。
「 なまえー! 」
「 やっぱり、 」
「 おはよ、! 」
毎日毎日、五月蝿いのは、
おなじクラスの相葉くん。
「 昨日、いいとこ見つけたんだ! 」
「 ふーん、そう 」
「 だから、一緒に行こ! 」
と、無邪気に笑う、自称、
笑顔の宝石箱相葉ちゃん。
不覚にも、少しだけ可愛い
だなんて思ってしまった。
「 めんどくさい〜、」
「 えー、いいじゃん! 」
「 奢ってくれるならいいよ 」
「 しょうがないなあ、昨日入った
ばっかのお給料使ってやるか! 」
文面に表したら、あひゃっ
と、書くのが1番しっくり
くるような、独特な笑い方
をして、Vサインをした。
「 じゃあ、放課後ね! 」
「 はいはい、 」
;
放課後、玄関に向かうと既
に、奴は待っていた。少し
日が落ちて、夕日に染めら
れた奴に、少しだけ、格好
いい、なんて思ってしまっ
た自分が嫌になってしまう
( 静かにしてれば、格好いいのに )
奴は、俗に言うイケメン。
スタイルいいし、少しかけ
たパーマと明るい茶髪がよ
く似合ってる。友達が言う
には、かなりモテるみたい。
何がいいんだか、なんて考
えながら奴の元へと向かう
「 あ、なまえ! 」
奴はブンブンと手を降って
もう、遅いじゃん!だなん
て、口を膨らませてブーブ
ーいってる奴を他所に、私
が早く行こうよ、と煽る。
「 なまえが遅かったんじゃんかあ! 」
「 はいはい、すみませんね 」
「 じゃあ行こっか 」
そう言って、自分の右手を
私の、左手に差し出した。
「 は、? 」
「 手、繋ごうよ 」
「 ばかじゃないの、! 」
付き合ってる訳でも無いの
に。本当に不思議な奴だ。
「 がーん、 」
「 うっさい!ほら、行くよ 」
「 なまえのけち、 」
「 あんたほどじゃないです 」
なんて笑い合って。こんな
くだらない時間がずっと続
いたらいいのに、なんて。
;
「 うわあ、綺麗! 」
奴が連れてきてくれたのは
綺麗で小さな川原だった。
「 でしょでしょ! 」
「 人来ないし、
お気に入りの場所なんだ、! 」
「 私に教えたらダメじゃん 」
「 なまえはいいの、 」
そんな、いきなりの不意打
ちに、少しドキッとして。
「 きゃっ! 」
ついさっき、滑るから気を
つけてね、って言われたば
かりなのに、バランスを崩
して石に生えた藻で転倒、
「 うお、あぶねっ! 」
驚いて閉じた目を、ゆっく
りと開くと、私は奴の腕の
中にすっぽり埋まってた。
「 だから、言ったじゃん、 」
危ないって、奴は呆れた顔
で笑った。私を支える腕は
華奢な見た目からは想像で
きないくらいに、がっちり
としていた。やっぱり、男
の子なんだなあ、と思わず
キュン、としてしまった。
「 あ、ありがと 」
「 俺がいなかったら、
今頃びしょ濡れだったね 」
「 そだね、」
「 じゃ、そろそろ帰ろっか 」
相葉くんは、そう言って、
右手を私に差し出した。私
が手を握り返したのは、君
が好きだと気づいたから。
繋いだ手の平( 私の想い、伝われ! )
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