小説1
□この涙は演技じゃない
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かずくんと私の住む世界は
違う、そんなのはちゃんと
わかってる。自分でも遊ば
れてるのかな、なんて思っ
たりもして。私には、かず
くんの気持ちが解らない。
ただでさえも『演技派』だ
なんて言われてる彼なら、
意図も簡単に私を騙すこと
なんてできるはずで。私だ
けが、溺れてるの?かずく
んは私の事どう思ってる?
なんて聞く勇気は、結果を
聞くのが怖くて、これっぽ
っちもない。かずくんから
言われるくらいなら、自分
から別れを切り出したほう
が痛みが和らぐきがして、
別れよう、それだけ打って
メールを送信した。その瞬
間、私の目からは涙が溢れ
落ちた。泣くな、泣くな!
そう思えば思うほど涙は止
まらなくなって。私とかず
くんの生きる世界は違う、
そう自分に言い聞かせた。
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暫くすると、部屋にインタ
ーホンが鳴り響いた。私は
泣いていたから、出ること
なんてできるはずなくて。
居留守を使ってたら、がち
ゃりと鍵の開く音がした。
足音が近づいたかと思えば
目の前には、かずくんの姿
があった。これって、夢?
「 なまえ、? 」
かずくんは、私の前まで来
ると、意味わかんないんで
すけど、と私に携帯の画面
を近づけた。私は強がって
「 だから、別れて 」
とだけ冷たく言い放った。
「 理由聞かせてくれなきゃ、
わかんないんですけど 」
「 かずくんは、」
「 私の事、好きなの? 」
「 え、」
「 かずくんの回りなんて、
可愛い女優さんとかアイドルの子が
沢山いるのに私なんかと、! 」
その瞬間、私はかずくんの
匂いに包まれた。私の大好
きなかずくんの香水の匂い
「 それで、? 」
「 かずくんは演技上手だし、 」
「 本当は私の事なんて『ばか、』 」
「 確かに、可愛い人はいっぱいいるよ、」
「 けど、なまえに勝てる人
なんて1人もいないんだよ、? 」
この時、かずくんの回した
腕に力が籠った気がした。
「 うそ、」
「 俺の事、そんなに信用
してくれてなかったんですか、? 」
急に引き離されたかと思え
ば、顔の距離僅か5センチ
「 か、ずくん 」
かずくんのセピア色の瞳か
ら、綺麗な涙が一筋流れて
いた。人の涙をここまで綺
麗だと思ったのは初めてだ
った。そんな事、言わない
でくださいよ、と、真剣な
瞳で見つめられたら、私も
思わず、涙を流していた。
「 信じていいの、? 」
「 信じてくれないんですか、? 」
「 かずくんの気持ち、
わかんない、わかんないよ、」
ちゅっ、と唇に降ってきた
のは、深い口づけだった。
「 んっ、!か、ずくっ 」
「 俺、なまえしか考えらんない、」
唇が離れると、かずくんは
こういって笑った。私は、
「自惚れていいの、?」と
そう返した。かずくんの返
答は勿論、決まっていて。
「 当たり前でしょう、? 」
すっごく嬉しいのに、涙は
ぜんぜん止まらなかった。
「 なっ、んで、! 」
「 止まれ、止まれ! 」
「 いいよ、」
かずくんはまた、私を抱き
寄せて、たまには俺に甘え
てくださいよ、と言った。
もしかしたら、かずくんも
不安だった、?口には出さ
なかったけどそう感じだ。
「 かずくんっ、 」
んふふっ、そう笑ってるか
ずくんの目には、まだ涙が
うっすらと浮かんでいた。
なんて綺麗なのだろう、私
は思わず、かずくんの目元
にキスを落としてしまった
この涙は演技じゃない。
( 君の涙は美しかった )
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