小説1
□ぼくのもの
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軽い足取りで向かった2年
教室。ガラガラと音を立て
て扉を開くと、なまえは
ふわふわと、栗色ロングヘ
アーを靡かせながら、窓際
で二宮と笑顔で話していた
「 あっ、さとちゃん! 」
なまえはオイラを見つけ
ると、ブンブン手を振った
そんなに、振んなくても分
かるのに。愛されてんだな
なんて小さな幸せに浸る。
でも何処か物足りなくて。
「 なまえ、帰ろ? 」
「 うんっ! 」
なまえは、自分の机の脇
に掛かったカバンを器用に
外すと、それを腕に掛けて
にのみやくん、バイバイと
また手をブンブン振った。
そんななまえを見て、俺
は、二宮に嫉妬を覚えて。
「 早くいこっ、! 」
と、なまえの華奢な手首
を思いっきり引っ張った。
「 さとちゃん、」
「 さとちゃんってば、! 」
自分でも驚くくらいの、狭
い心に自己嫌悪していた。
「 腕、痛いよ 」
我にかえると、目尻に少し
涙を溜めて俺を見上げる、
なまえの顔が、俺の視界
いっぱいに広がっていた。
「 あ、ごめ、 」
悪いのはなまえ、なまえが
二宮なんかと、仲良く話し
てるから。ああ、俺、相当
嫉妬深いな、最悪だ、俺。
「 さとちゃん、ここ道路、! 」
気がつくと、なまえを思
いっきり抱き締めていた。
「 いいじゃん、 」
「 だって、 」
「 、何? 」
「 恥ずかしいよ、 」
そう言って、俺の胸に顔を
埋めたなまえがすっごく
愛しくて仕方がなかった。
「 ね、なまえ 」
「 ん、なあに? 」
「 なまえは、誰のもの? 」
「 さとちゃんの、 」
「 ん、上出来、 」
いまだに顔が火照っている
なまえにキスを落とした。
「 んっ、ふぁ 」
「 さ、とちゃっ、! 」
苦しくなったのか、なまえは
俺の胸を、ドンと叩いた。
甘く、柔らかい唇から自分
の唇を離すと、ちゅっ、と
可愛いリップノイズが響い
た。なまえは、それにさえ
も顔を赤らめて、目をうる
うるとして俺を見上げた。
それ反則。わかんないかな
「 その顔好き、 」
「 さとちゃんのばかっ! 」
「 てかさ、 」
「 な、に? 」
「 俺といても楽しくない? 」
「 えっ、? 」
「 二宮とだと楽しそうだから、 」
こんな事を言う俺は、相当
子供なのだと思う。けど、
なまえだけは、譲れない。
「 違うの、! 」
「 さとちゃんとだと、
すっごく緊張しちゃって、… 」
何喋ったらいいかわかんな
いの。なまえがボソッ、
と嘆いたそれすらも、俺の
耳が聞き逃すはずなくて。
「 かーわい、 」
なまえが可愛いすぎるから
腕に、更に力がこもった。
「 さとちゃ、 」
「 なまえは、 」
「 俺だけ見てればいいの、 」
なまえは俺のものなんだよ
って、もう1度、しっかり
なまえの頭に叩き込んで。
「 、わかっ、んっ! 」
なまえの返事を待たずに、
もう1度キスを落とした。
ぼくのもの
( ずっと離れないでね、 )
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