小説1

□タイムリミット
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「 これ、使えば? 」



高校の入試にも関わらず、
消しゴムを忘れてバカ丸出
しな私に、自分の消しゴム
をちぎって渡した男の子。



「 あ、ありがとう 」



顔をあげれば、目の前には
睫毛がすっごく長くて、と
ても同い年と思えないよう
な美少年が微笑んでいた。
その時私は、はじめての気
持ちで胸が一杯になった。











あれから、もう5ヶ月が立
つけど、マツモトくんとは
なんの関わりもなかった。
勿論、私なんかがマツモト
くんの視界に入るなんて、
到底、無理なお話な訳で。



「 なまえー、! 」

「 なに、? 」

「 マツモトくんの事なんだけど、 」

「 うん 」

「 彼女いるみたい 」



そんなのわかりきってた事
なのに。あのマツモトくん
に彼女がいない訳ないって
かっこよくて、優しいんだ
から、きっとモテモテで。



「 、保健室いってくるね 」



それは太陽が照りはじめて
初夏に差し掛かった頃の事











保健室のドアを開けると、
ひんやりとした心地よい風
が、私の体を包み込んだ。


「 せんせー、いないんだ 」



どうやら今日は、先生はご
不在の様子。すっかり何も
やる気にならなくなった私
は、そのまま眠りについた。











「 、ちゃん 」



遠くから声が聞こえて起き
上がると、ボヤけて誰なの
かはよく解んないけど、目
の前に誰かが立っていた。



「 なまえちゃん、? 」



まだちょっとだけ視界のボ
ヤける目を手で擦ると、そ
こには紛れもなく、あのマ
ツモトくんが立っていた。



「 まっ、マツモトくん! 」

「 名前覚えててくれたんだ 」



それはこっちのセリフなの
に。そういって、無邪気な
笑顔で笑うマツモトくんに
私は、更に引き込まれて。



「 あっ、なんで、 」

「 もう下校の時間過ぎてるから、 」

「 え、うそ!? 」

「 ほら、 」
マツモトくんが指を差した
方を見てみると、時計の針
は既に7時を指していた。



「 俺、保健委員だからさ。
交代で保健室の見回りやってんの、 」

「 そ、なんだ 」

「 それにしても、 」

「 なまえちゃんて、
寝起き悪いんだね 」



「 、あ、ごめん! 」

「 何回呼んでも起きないから心配した、 」

「 本当に、ごめんなさい! 」

「 いや、いいんだけどさ 」



この空間に、マツモトくん
と2人きりだという事実に
耐えられなくなった私は、
スクバを右手に手に取って



「 じゃあ、私帰るね 」



それだけ言って、保健室の
ドアを、勢いよく開けた。



「 まって、! 」



保健室を後にしようと、ド
アに伸ばした逆の手首に、
もの凄い違和感を覚えて。



「 マツ、モトくん? 」

「 こんな時間に
女の子を1人で返せないよ、 」



マツモトくんは、私の手首
をがっちりと掴んで、私の
目を見てそう言った。そん
なに見つめられたら、目を
逸らせらんないじゃんか、



「 家、近いし大丈夫だよ 」

「 ダメだって、 」

「 それにマツモトくんには、! 」



彼女がいるんでしょう、?
そう言おうとしたけど、言
ったら絶対泣いちゃうから
そんな事言えるはずなくて



「 ほら、行こ? 」



今だけ、この一瞬だけでい
いから、マツモトくんに彼
女がいる事を忘れたかった
この恋が恋であるうちに、
この思いを伝えたかった。



「 マツモトくん、! 」

「 私、「俺さ。」 」

「 なまえちゃんが好き、 」

「 入試の時から、ずっと。 」

「 う、そ 」

「 ほんと、 」

「 だって、マツモトくんには
彼女いるって、! 」

「 いないよ、ほら、」

「 好きな奴にしか、
こんななんないから、 」



マツモトくんは、私の手の
平を自分の胸に導いてそう
言った。下を向いてちょこ
っとだけ照れてるマツモト
くんがが剰りに愛しくて。



「 マツモトくん、 」

「 私も、入試の時から、ずっと好き、 」

「 なまえ、 」



呼び捨てにドキッとするの
だって、紛れもなく、マツ
モトくんが好きだからで。



「 俺と付き合ってください 」

「 はい、! 」





イムリミット
( 愛は、無期限でありますように )










 

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