小説1

□儚く、ゆれる。
1ページ/1ページ




早く、早く、早く。手に小
さな箱を握って、僕は走り
続けていた。ポタポタと、
落ちる汗さえも忘れて。た
だただ貴方に会いたくて。












暫く走って行くと、僕の目
は彼女の住む、大きくて綺
麗なアパートの姿を捉えた



「 っはあ、 」



肩で息をしながら、インタ
ーホンに手を伸ばす。何度
か鳴らしてみるも、返事は
なかった。おかしいな、こ
の時間はいるはずなのに。
不思議に思ってドアノブに
手をかける。ガチャリと、
ひねると、ドアは開いた。



「 、! 」



俺の手から、ドサッと箱が
落ちた。中に入ると、玄関
には彼女の靴の隣に、男物
の靴が1つ、綺麗に並べら
れていた。そして、寝室か
ら、彼女と男の吐息が聞こ
えた。馬鹿な俺でも最中、
なのは理解できた。でも、
やっぱり馬鹿で、単純で、
欲求が有り余った僕だから
。その彼女の甘い声にまで
欲情してしまって。いけな
いと分かっていながらも、
自分の手を止めることがで
きなかった。暫くすると、
彼女と男の吐息は更に大き
くなっていた。僕は下着の
中で欲を放ってしまった。

郵便受けに、くしゃくしゃ
になった箱を突っ込んで、
また走り出した。下着が気
持ち悪いのなんて、全然気
にならないほどに、心がの
方がモヤモヤした。馬鹿で
頼りなくて、金もない僕に
彼女を満たす事は、やっぱ
り無理だったのだろうか。
今日の6ヶ月記念に、5ヶ
月間バイトして貯めたお金
を全部叩いて買った安物の
指輪も、もし、あげていて
も、捨てられていたのだろ
うか?僕は遊ばれていた?
僕が年上だったら、もっと
恰好よくて、頼りになれば

走っても走っても、モヤモ
ヤが消える事はなかった。



「 なまえさん、 」



こんなにこんなに、好きな
のに。始めて、人をこんな
にもも好きになったのとい
うのに。神様は不公平だ。



「 やっぱ、馬鹿だ、僕 」



早く、早く、早く。こぼれ
落ちる涙さえも忘れて。少
年の初恋は、儚く揺れる。





く、揺れる。
( 結局いい事なんてない )








 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ