長編 / お題

□どんな過去も、
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(もう、こんな時間か、)



仕事が終わって、時計を見れば既に短針は12時を指していた。今日は仕事が上手くいかなくて、無性に会いたくなった。なまえの声が、笑顔が全部全部愛しくなって。



『 俺、先に失礼します 』



スタッフさんとメンバーにそれだけ告げて、車を走らせた。











なんで今日に限って、現場遠いんだよ、なんて。思わず、アクセルを踏む足にも力が入る。



ああ、俺、なまえがいなきゃダメなんだな、なまえの全てで、俺は目を開いて歩けるんだ。



なまえはまだ、翔ちゃんのこと、忘れられないのだろうか、1人で苦しんでいるのだろうか。



俺がどんな過去も受け止める、そう言えたら。そう言えたら、少しでもなまえのことを癒してやることはできるのだろうか。



考えても考えても答えがでなくて、自己嫌悪した。鞄から無造作に煙草を取り出して火を付けた。



(これ、翔ちゃんのやつ、)
どうやら、間違えて翔ちゃんの煙草を持ってきてしまったようだ。
(ああ、もう最悪。)



煙草の灰を落としたのと同時に、なまえの住むアパートが目に映った。



どんな明日だって、分かち合いたいんだ。だから俺はなまえのもとに。




 
 

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