Ｎovel
□せめて今日だけは
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暑い。ただそれだけのことなのにイライラするし頭が痛い。頭の中に文句しか出てこない。イライラしたって余計暑くなるばかりなのに。
何でこんな暑いのにそんな脳天気でいられるんだ。本当に理解不能。何が面白いのかわからないけどいつもあいつは笑ってる。それを遠くで見守るだけの俺。
笑う門には福来たる、なんて言うけどそれは嘘だ。あんなにみんなに笑顔を振り撒いているあいつはちっとも幸せなんかじゃない。少なくとも俺から見たら。
「佐伯くん。片思いって辛いね」
そう言った時でもあいつは笑ってた。言葉と表情が合ってないぞ、と俺が返すと、いつもより少しだけ憂いを帯びて、それでもあいつは笑った。