響 冬馬

□夜明けに見送られて
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閉まる扉の音と共にゆっくりと、君と生まれた街から遠ざかってゆく。



空には大きな七色の陽射し。

離れる君への置手紙。

思わずレンズを向けたけれど…

ファインダーを覗きピントを合わせたものの、心なしか淋しげに歪む色。

キレイな半円を描いたそれは、今の俺には写せそうにない。



ガタンゴトン…



がらんとした車内に響く、線路と車輪が織りなすリズム。

瞼を閉じ、小さく息を吐いた。



「隣、いいですか?」



聞き覚えのある澄んだ声と、そして…



「ズルイですよ!ひとりで遠くに行こうとするなんて」



ちょっと拗ねて尖らせた唇と、優しく睨む瞳。



「鳥飼…」

「私をひとりにしないって、どこにも行かないって、約束してくれましたよね?」

「…どうして……?」

「言いましたよね?先生のことなら、私がいちばん解ってるって」



半分泣き顔なのに、その双眸には強い意志が宿っていて。



「…ごめん……」

「謝らないでください。そんな風に謝られたら私…」



どうしたらいいか解らないと、消え入るような小さい声で俺の鼓膜を震わせた。



「その荷物…は…?」

「…言わせる気ですか?」





これからふたり

どこへ行こうか



誰もいない

何にもない

淋しいなんて思ったりしない

ふたりだけの場所へ…










fin



起稿 2009.10.14
脱稿 2012.07.10
投下 2012.07.18


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随分前にあらすじ書いていたんですが、色々と忙しくて恋ゲから遠ざかっていたのもあって、放置してたのを加筆してどうにか投下v
学園を去る先生を追いかけるヒロインちゃんです。
去らなければならなくなった理由や、ふたりの行き先は、みなさまのお好きなように設定してくださいね♪←他力本願


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