白い、

□1話
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「ありがとうございやしたー」


外の蒸し暑さから脱出したと思えば今度は冷却地獄
ここに限った事ではないが、この極端な温度差はどうにかして欲しいものだ

客に向かってお決まりの台詞を言い放ち、カウンターの下に潜ませていた雑誌に目を落とす午後10時23分。
放課後、家へ戻る途中のコンビニに入り"大森"と書かれたロッカーに頭を突っ込み制服を探す
以前、店長に「服探すだけなのに頭突っ込む必要ないだろ」と言われていた
これは昔からの癖なのでそう簡単には直せない。この方が早く見つかるし。


「大森、もう上がっていいぞ」

「うす」


雑誌を適当に丸め、太ももで隠しながら休憩室へ戻る
重たい扉を空いている手で開けるとソファーで夜勤の梶原さんが着替えていた
もたもたとボタンを留めるその手はもどかしくて見てられない


「梶原さん、おつかれっす」

「んあ、お疲れ」


下を見たままで声だけが返ってきた
その声には返事をせず服を脱いで、ぐしゃりとロッカーに突っ込む
10年ほど前に整理整頓という文字は頭の辞書から消え失せた


「牧くんさ、今から0時まで働く気ない?」


着替えてる所悪いけど、と付け足す


「は?え、誰か休みなんすか」

「や、そゆわけじゃないんだけどさ、次の子が来るまで俺1人なんだよねぇ」

「はぁ」

「後2時間ばかし頑張れば給料だってその分貰えるし。ね?」


つまりは付き合えと
流石に疲れているし、断ろうと思ったが給料の話はおいしい
少し迷った後、金の魅力に負けて首を縦に振った





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