にじいろ
□優しい甘さのショコラショー 【Made樫野】
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―…なんとなく、夜の調理室の前を通りかかるのが日課になっていて。
身をひそめながら見る、窓越しの調理室の中に1人の影。
おいおい…メレンゲに薄力粉を混ぜるときはそんなに混ぜたら泡が潰れちまう…
今すぐにでも、調理室の中に行って教えてやりたいのに…
あ!バカっ…チョコを沸騰したお湯に!!
足が動きそうになり、止まる。何度も繰り返してきた動作。
入れるわけない。
なんとなく、本能的に足が止まってしまうのだ。
アイツはこんな夜更けに人知れず努力してる。その密かな努力を踏み躙っていいのか?
それに…俺はどうしても厳しい言葉しか掛けられない。
それでまたあんな風に泣かれても困る。花房や安堂にしられたら尚、困る。
だから、俺は今日も調理室に背を向ける。