にじいろ
□ボーダーライン
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あー…もう、自分がわかんねぇ……
―ボーダーライン―
『へっくしゅ…』
頭をタオルでガシガシと拭きながら嚔の聞こえた方を見ると、鼻を赤くしたアイツが花房に『大丈夫?』と声をかけられている。
なぁにが『大丈夫?』だっ!?誰の所為でこんな目にあったと思ってんだと言ってしまいそうだったが…ぐっと堪えた。だって、既にアイツが天野が花房のことを怒ったから。
花房のせいでもあるが、俺は無鉄砲な天野の行動の所為で一緒に池に落ちることになったわけで…
《でも…なんで…》
自分でもわからなかった。
天野が池に落ちると思ったときには既に駆け出していた。勝手に体が動いてた。
それは、何故だ?
天野が無茶するからだ。
コイツはいつも自分の事より、他人の事が大事だ。だから自分を蔑ろにする。
まったく…放っておいたら傷だらけになりそうな奴。あと、すんげぇドジだしな…
とか考えながら天野の事をボーッと見ていたらバチっと目が合ってしまった。
『…樫野、あ…ありがと』
『あ?』
『花房君のローズウォーター守る為に一緒に池に落ちてくれて』
花房のローズウォーターの為?
胸を激しい焦燥感が襲う。怒りにも似た感情が…
《違う、俺は…》
『違うっ!俺はお…』
《お前の為に………っ》
…え?
なんだ、俺は…今何を言おうとした?
それにこの心のざわつきはなんだ…?
『?…樫野、どうしたの?』
『……っ///』
天野が下から覗きこむみたいに俺の顔を見てきた。
慌てて顔をふいっと背ける。
『なんでもねぇよっ…』
『変なの…』
俺はただ天野が心配だっただけだ。花房のローズウォーターの事なんか頭になかった………それは?
《俺、天野が好きなのか?》
好き、という感情はどういうものだろうか。
言われたことは山ほどあるが(特に小城先輩に)、思ったことは無い。
《それにいつから…?》
『さあ、バラのケーキ完成させよう♪』
張り切るアイツの横顔を見ながらもずっと自問自答を繰り返していた。
《…わかんねぇ》
終わりの見えない自問自答がはじまった。
…好き、のボーダーラインを探して。