短編や企画作品
□温かい居場所
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「まま!なんで!なんでさきをおいておそらにいっちゃったの?」
自分の母の墓の前で泣き続ける一人の女の子。
その近くには父親の姿すら見えない。
そう。この女の子は一人でこの森の奥にある墓に訪ねてきたのだ。
「さきいやだよ!いまのぱぱいやだ!まえのぱぱのほうがよかった!!なんで?なんでままは、まえのぱぱとばいばいしちゃったの?」
着ている咲の服のすそは涙で濡れ染みを作る。
「おじいちゃんやばじるくんもいるけど、ままがいないのはもといやあああ!!」
ひたすら母の墓の前で泣きじゃくる咲。
―カサ
不意に聞こえた枯葉を踏む音。
泣き止み、音のする場所に体をむけ警戒する。
だんだん見えてくる容姿。
長身に銀髪の短い髪の少年。
その手には花束が握られていた。
「・・・・ぐすっ。だあれ?」
「さきって名前の女の子の兄だ。」
自分の兄だと名乗る少年。
「さきには、おにいちゃんなんていないよ?まま、おにいちゃんがいるってこと、なあんにもいってなかったもん。」
服の袖でゴシゴシと涙をぬぐい少年を凝視する。
「でもねえ、ままがしんじゃうまえにね、しゅくあーりょっていうおとこのことなかよくちてねってゆってた!」
したったらずの言葉で少年に言葉を紡ぐ。
「さきの言うスクアーロってのは俺だぁ。」
警戒心を解いた咲に近づき、咲を抱き上げる。
花束を麗蘭の墓へ置く。
「さき。今日から、俺達は兄妹だ。」
「きょーだい?」
「そうだぁ。俺と一緒にくるか?」
「しゅくといしょにいくー!」
「そうだと思って、さきのじじぃには言ってあるぞぉ。」
空いているほうの手でがしがしと咲の頭を撫でる。
「これかりゃ、しゅくにぃといっしょー!」
そのまま、2人は森から消えていった。
咲に新しくあったまる居場所が出来た瞬間。
→あとがき