短編や企画作品
□眠り姫と王子様
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ピッ。ピッ。ピッ。
病室一杯に機械音が響き渡る。
「まだ起きねぇのかよ。」
ベルは、酸素マスクをして目を閉じている咲に問い掛ける。
「王子待たせるとかありえねーんだけど。」
そんな言葉とは裏腹に優しく咲の頭を撫でるベル。
−
「知ってたベル?眠り姫はね、王子様のキスで目覚めるんだよ。」
「ししし。王子そんなの知ってるし。」
−
「咲が目覚めてくれるなら王子なんでもするのに。」
咲の頭を撫でていた手は移動し、咲の手を握っていた。
「王子咲が居なくて淋しいんだけど。はやく王子の相手してよ。」
−
「ベルー。あそぼー。」
「王子遊ぶの大好き!」
「ナイフ投げるのだけは止めて。」
「しししっ。だって俺王子だもん。」
「理由になってないから」
−
「咲さぁ。王子に言ってたよね?『眠り姫はおーじのキスで目が覚める』って言ってただろ。王子してやるから目覚ませよ。」
ベルは咲の酸素マスクを取り、咲の唇に近づく。
−−−−−−−チュッ・・・・・
静かな部屋にリップ音だけが響く。
「王子がキスしてやったのになんで起きねぇ
んだしッ!」
そんな言葉を咲に投げる。
「んッ・・・・・・」
「咲!?」
「べ・・・・・・ル・・・・・?」
「咲・・・・・」
−−−−−ギュッ!
目が覚めた咲に抱き着くベル。
そんなベルのくせっ毛を指に絡ませながら頭を撫でる咲。
「しししっ。咲が言ってた事はほんとーだったな。」
「なんのこと?」
「眠り姫とおーじのはなし。」
「もしかして、本当にやったの!?」
「ししし。だって俺王子だもん。」
顔をあげて不敵に笑うベル。
「ベル。」
「なに。咲?」
「だーいすき!」
「王子も咲のことだーいすき。」
眠り姫と王子様
眠り姫におきた小さな奇跡。