捧げ夢&頂き物

□優しく強引に、
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―――ボンゴレ学園。

ここら一帯じゃ有名な高校で、元締めをマフィアがやってるだなんだと変に噂されている高校だ。
…そんな高校に私は居た。

クラスがA組、B組、C組と分かれており、A組は俗に言う『天才』というものが集まっているところだ。そして、アルファベットの順が遅くなっていくにつれ、脳の性能が低くなっているのだ。
私はどちらかと言えば頭がいい方のB組にいる。

そして今日も、自分の席で本を黙々と読んでいた。
友達がいない訳じゃない。
けれど、大体がクラスの振り分けテストの時に、A組かC組にいってしまい、私は友達の中で、ほぼ一人でB組に残っている状態なのだ。
ふぅ、と溜め息を一つ付いた瞬間。

ひょいと、目の前から活字が消えた。
消えた、と言うよりも、クレーンゲームで上に釣られるようにいってしまったのだ。

「あッ」
「まーたこんなモン読んでんの?」

うしし、と愉しそうに笑う彼は、金髪にティアラを乗せた某EU国の王子様であるベルフェゴール。
彼はA組なのだが、ここ最近私が本を読んでいる時間を狙ってB組に来ては私をちょっかいを掛ける。

「ちょっと、」
「あ?“デュラララ!!”…?」
「やめてよ。」

すいません、すいませんね。
私がこんなのにハマっててすいません。

内心で愚痴をこぼしていると、ベルがその本を見て何かを考えている。
―――何か、嫌な予感がして堪らないのは私だけか。

ししっ、と笑った彼は―――廊下に飛び出した。

「ッ!!!?」

何を―――。

私も慌てて、後を追うように廊下に飛び出した。
その金髪は遥か遠くに。

本は、彼が持ったまま。

「〜〜〜っ!!!」

募るイライラを無理矢理腹の中に押し込めて、私は走りだした。






……



会議室、生徒会室、多目的室、其の他空き教室、保健室と、私は彼が行きそうなところを片っ端から回った。

――居ない。
――居ない居ない居ない!!
――もー!何処行ったんだ!?

苛々。
もう限界点に届きそうな怒りのオーラををもろに出しながら、何処に行ったか考えを巡らせる。

――何処だ?
――……………、………あ。

あった。
彼が、行きそうなところ。
普段は鍵が掛かっているが、きっと開けてしまうだろう。

そうと決まれば、私は階段を駆け上がった。



………




バンッ、と勢いよく、屋上に出るドアを開けた。

「なーんだ、速かったじゃん♪」
「ッ返してよ、本!」
「ヤダね。」

追いつめられたような悪戯っ子の様にペロッと舌を出したベルは、フェンスの向こう側に本をぶら下げる。

「ちょっと…!!!」

人差指と親指しか支えの無い本。

「ここでさ、ポイってしたらお前どーする?」
「そんな事言ってないで返しなさいってば!」

身長が足りない…!
本に手が届かなくて悶える私を、彼は楽しそうに、愉しそうに笑っているだけ。

――こんの腐れ外道…!

そして何回手を伸ばしたことか。
分からなくなって、ジャンプした脚がもつれた時、だった。

ベルが、本を屋上のコンクリートの上に投げたと同時に、私の腰を引き寄せたのは。

「ッ、ちょ……んぅっ!!?」

そして、優しく強引に、キスをした。

――うう、全く歯が立たなかった…。
――なんか悔しい…。

甘い甘いキスの時間に、そんな事をぼんやりと思う。
そして、ようやく離された唇に、まだ彼の温もりを感じながら、ゆっくりと顔を見てみる。
ベルの顔は、至極たのしそうで。

「ったく、王子がこんなにアピールしてんのに気付かないって何なの?お前。」

――何のことだよ?

そう聞こうとしたが、それはベルの声によって遮られた。

「名前、」

改めて呼ばれた名前に、どきりと心臓が脈打った。

「好きだ。」

私はうれしすぎて其処にへたり込んだ。





優しく強引に、
キスをして。






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