文
□孫鼠+少年
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※腐向けですので閲覧注意。
ここの来客用のドアには他の来客用の部屋にないカギがついていた。
どうしてこの部屋についているのか。
どうしてこの部屋を彼に貸したのか。
結局おじーちゃんが部屋の鍵を持ってるんだから意味なんてないのに。
おじーちゃんは“お客様だから”って言うけど、本当に意味なんてない。
カギつきのドアを開けると薄暗く、小さな蝋燭の灯火がわずかに部屋の輪郭を作っている。
音を立てないようにそっと中に入ると勢いよくベッドの上の布団が跳ねて彼が起き上がった。
「……ジェームス…?」
大きくて丸い目をさらに丸くして呆けている彼の顔は蝋燭の灯りと熱帯夜のせいでわずかに赤い。
……目線を少し下にすれば、赤いのは顔だけではないようで。
「どうしたのその格好。何やってたの?」
「これは……ってあ!入ってくるならカギ閉めて!!」
おどおどしたり慌てたり忙しそうだと思う。
言われた通りカギを閉めて、ベッドに腰掛け彼を見やればバツの悪い顔をして暑いからだと下を向いた。
手に掴んでいる布団からは隠しきれていない二の腕と腰のラインが汗で艶めいていた。
そうかと思えば掛けたはずのカギがどうして開いていたのかと子供のように睨んでくる。
「“ぴっきんぐ”って言うのかなー?意外と簡単に開いちゃったよ」
ケラケラと笑い飛ばせば彼は困ったような、呆れたような顔をした。
彼の表情は見てて飽きないから好きだ。
はたと持っていたアイスのことを思い出して手元を見れば、アイスの根本の部分が溶けて白い汁が垂れていた。
その様がこのアイスを作った人に似ていて面白い。
そういえばアイスのパッケージを廊下に捨ててきたが、結果はおじいちゃんの小言かキャサリンおばちゃんの転倒か、考えただけでわくわくする。
暑い夜だろうとボクにとってはどうって事ない。
ボクが楽しければそれでいい。
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