文
□猫+少年
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※PS2ゲーム版沿い。ネコゾンビ主観、少し暗い話。
隣の部屋で知らない声と、あの老鼠の厭らしい声が聞こえた。
―――また新しい客が来たのか。
まだ若い……少年の声のような気がした。
彼の結末は最悪だと決まっている。
それを知っている僕は、彼を助けられない事も決まっている。
また繰り返される悲しい最期。
逃げる事も立ち向かう事も助ける事も叶わない。
ボクにできる事は一つだけ
「―――――――――――っ!!」
ボクは力の限り叫んだ。
意味なんてなかった。
こんな事しても逃げられないし立ち向かえないし助けられない。
何度も聞こえてくる無意味な声は時間が経つと消えていった。
またこの部屋に静寂が戻る。
ボクは床に座って壁に凭れ掛かった。
冷たくて、冷たくて、だんだんと意識が遠退く中で、ふと扉の向こうの気配に気付く。
「もしかして君は、新しく来た人ニャ?」
扉に向かって話し掛けると、その気配は小さく肯定した。
ボクはもう動けなくて、彼の方から来てもらうよう頼むと彼は素直に従った。
「 。」
「 !」
また無意味な声が聞こえる。
前にも同じやり取りをして、同じ結末を迎えて。
その繰り返し。
「疲れたら寝るといいニャ。そうすれば少しは精神力が回復するニャ。」
だんだん眠くなってきた。
ふと、隣に違和感を感じた。
「……君の部屋は隣ニャ。」
だって疲れたから、って笑う君の顔は確かにやつれていて。
ここは月が良く見えるから、って穏やかに言う君の顔は蝋燭がなくても綺麗に映えていて。
いつか君は目を閉じた。
「確かに疲れたニャ……」
今度は壁に凭れかからずに、
「綺麗な……満月ニャ…………」
横目でボヤけていく月を見て、
僕も目を閉じた。
はじめての温度
そして僕はこの心地よさに身を任せる。
.→後書き