文
□指揮者+死体
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※死体視点。指揮者が変態気味な話。
また…不快なノイズが聞こえてくる。
扉の方を見るとしっかりと閉まっているし、そもそもここは地下室で防音だって効いているはずなのに。
衝動的にそこら辺に転がっていた鈍器を手に取り、地上へ続く道を駆け出した。
「煩い!」
地面から這い出るなり持っていた瓶を雑音の元に投げつける。するとそれは鈍い音と短い呻き声を発し、ようやく止まった。
「急に出てきて酷いじゃないか。 ちゃんと我輩の歌を聴いてくれたまえ!」
「君の声は嫌っていう程聞こえてきたよ。 お願いだからさっさと消えてくれ」
体を張った彼の願いには空き瓶しか返ってこない。しかもそれが鳩尾に当たったのか派手にむせていた。
「げほっごほん! ……うぅ、やはり我輩の芸術的な歌声は君には分からないのか。やはり理解者はあのレディーぐらいしか…もう一度現れてはくれぬものか」
「彼女が君のファンである可能性は100%ないから安心してくれ」
冷たく言い放つと彼は一気に涙を流した。
何て言うか…汚い。これが馬の小便的なやつか。
「ってうわっ…?!」
「君って奴は…!」
いきなりこっちに走ってきて、逃げる間もなく身体をホールドされた。
「もしかして我輩の歌声を一人占めしたいのか!?そうか!だったらいくらでも聴かせてやるぞ!!」
「何だそのキモい発想は! お前の性癖に興味はないんだよ!!」
「照れなくても良い。 やはり我輩の美声は皆に伝わっているのだな!」
「な訳──痛ッ、身体がっ!!抱くならもっと優しく……ってかいい加減その手を離してくれ!」
「それにしても君は身体が細いな…こんなんじゃ腹式呼吸が───」
「触んな!僕は変態が嫌いなんだよ!!」
彼の顎に見事なまでのアッパーが入り、
爽快な音が周りに木霊する。
この日僕は変態を全力で拒絶した。
Fin.→後書き
お題配布元;確かに恋だった