□蝋燭×死体*
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扉をノックする音が聞こえ、それに返事をすると男が入ってきた。
明るいところが苦手で部屋の中は薄暗くしてあるが彼の所為で辺りが蝋燭の灯に照らされる。

「食事だ…。」

そう呟き、地獄のシェフはコトリと食器を置いた。今日の夕食は血みどろソースがたっぷりかかったハンバーグか…美味しそうだ。

「それにしても、君はもう少し愛想良くしてくれないかな。 気が重くなるじゃないか。」

傍らに立つシェフを睨み上げるが一瞥されただけですぐに自分が作った料理へと視線を移した。

「はぁ……料理はちゃんと残さず食べるからシェフは向かいの椅子に座ってくれ。 ワインは飲めるだろう?一緒に飲もうじゃないか。」

笑いかけると彼は黙って椅子に座りコック帽を横に置いた。どうやら僕の提案に同意してくれたようだ。
もう一つ棚からグラスを持ってきてシェフの為にワインを注ぐ。

「どうぞ。」

グラスを差し出してから気付いたが、シェフは口まで上着で隠れているのでどうやって飲むのだろうか。

じっと様子を伺っていると彼は上着のボタンを第三まで外し、ワインに口を付ける。当たり前の行動だったが、初めて見るシェフの顔に驚きが隠せなかった。

「なんだ…?」

「あ、いや…料理、いただきます。」

怪訝な表情をするシェフから話題を反らすように食事を始める。
もう一度彼を横目で見ると、仄かに頬が朱に染まっていた。やっぱり…彼には容姿端麗という言葉がよく似合う。さすがあの看護婦に好かれる男なだけはあるな。

変な事に納得しながら僕は食事を終えた……。



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