文
□老鼠×魚
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「ムフフ……。」
灯りの点いていない談話室にグレゴリーの声。他にも男と女のものが聞こえた。
『奥さん…ッ!』
『いけませんわっ。 私には主人が…!』
『そーは言っても奥さんの**は****…。』
『ああっ…**ぅッ!』
ごぽ……
TVの横からTV…ではなくテレビフィッシュが現れた。
「なんだお前か…。 今いいところなんだから邪魔するんじゃないぞ。」
こくりと頷いたのを確認し、またグレゴリーはTVの方を向く。
「ムフフ…。」
テレビフィッシュは音を立てないように彼の隣まで泳いでいった。そんなことには気に止めずグレゴリーは如何わしい映画を観てニヤニヤしている。
端から見れば奇妙な光景だった。
「ちっ…せっかくいいところだったのに……。」
CMに変わるとグレゴリーは露骨に嫌な顔を浮かべた。
車や発泡酒、洗剤の話題…中には芸能人と鹿が宣伝しているものもあった。
「地デジ化……。」
さっきのCMでも流れていたので自然と意識してしまう。そういえばここのTVはまだアナログだ…。
ふと視線を感じ周りを見渡すとすぐ傍にグレゴリーをじっと見つめるテレビフィッシュがいた。
「なんだ…?」
そいつを睨んだが奴は表情一つ変えず無言でこちらを見ているだけだ。
その瞳が何を訴えようとしているのか理解すると、グレゴリーは大きな溜め息をついた。
「ワシは新しいものが好きじゃないからずっとこのTVのままにしておくわい。」
テレビフィッシュの表情が少しだけ明るくなったような気がした。
「第一ここには地上デジタル放送の電波が──って、なんだお前は。」
そいつは自分のTVから離れ、グレゴリーの頬に頭をすり付けている。
「喜んでおるのか…?」
テレビフィッシュは答えなかったが嫌な気はしない。
「まぁなつかれるのも悪くはないな……。」
ソファーの背もたれに体を預け、柔らかい髪の感触に身を任せた。
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「おじーちゃんこんな暗いとこで何やってんの?…ニヒ。」
「ぅお眩しッ!」
「……!!」
「あ、おい待て…!」
「なんだお魚と一緒にいたんだ…まぁ逃げちゃったけどね…ニヒヒ。」
「わざとかジェームス。」
「ちがうよぅ。 ただおじーちゃんがHな映画観てにやけてる顔を見たくて電気点けただけだよぅ!」
「………。」
「でも面白いもの見ちゃったなぁ。 さっそく皆に報告しに行こーっと!」
「こらジェームス!変なことを言うんじゃないぞ!!」
.Fin