文
□老鼠+孫鼠+母鼠
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「おじー―ちゃん!」
ひょこっとカウンターの向こうから顔を覗かせたのはジェームスだった。
「どうしたのだ?」
宿帳を閉じ眼鏡を外すとジェームスはニヤニヤとグレゴリーを見ている。
「おじーちゃんはどうしてあの鬼ババアと仲が悪いの?」
「ん? あぁ……。」
興味津々な瞳でグレゴリーを見つめているジェームスは生き生きとしていて、腕をカウンターに乗せ祖父の返答を待っていた。
「ワシがあのババアと仲良くしているところを想像してみるがいい。 例えば食事中──
『ママ、今日のランチはシェフ特製のミイラ風ドリアでございますよ。』
『まぁ今日は随分豪華な昼食だねぇ。』
『ママの為にワタクシが注文しておいたのですよ。ヒッヒ…。』
『気が利くじゃないかグレゴリー。 じゃあさっそく食べさせてくれるかい?』
『もちろんでございます。 さ、ママ…あーん。』
『あー──
「うゎなんか嫌だね。」
「だろう? だから仲が悪い方がいいのだ。」
「おじーちゃんは今の関係のままでいいってこと?」
「そうだのう…。」
この時フロントのドアが開く音がしたがグレゴリーは気付かないようだった。
「いつかあのババアが年老いて動けなくなった時にでも今の仕返しをたっぷりさせてもらうわい。ヒッヒッヒ…。」
「おじーちゃんはいつもそんな事考えてるんだね!」
「こんな事でも考えてなきゃあのババアの機嫌とりなんてできないわい。」
「ふーん。 おじーちゃんも大変だね。」
ジェームスはにやりと笑い、とても可笑しそうな笑顔でグレゴリーを見た。
「僕シェフのおじちゃんに言っておやつ貰ってこよーっと!」
ぱたぱたと駆け出していき食堂の扉を開く。
「さて…ワシは談話室の掃─ハッ、」
グレゴリーはやっと背後で立ち聞きしていた人物に気付いた。
「マ、ママ……。」
「グレゴリー……あんたアタシと話してる時いつもそんな事考えてたんだねぇ。」
「じょ、冗談ですよママ! ワタクシはジェームスの話に付き合っていただけなのでございます!!」
グレゴリーママはうっすらと笑みを浮かべながらグレゴリーにゆっくりと近づいていった。
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