第2回謙光祭

□生意気
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8.生意気(謙也+白石)


朝から異様なまでにハイテンションな、俺の親友。
ぼんやりしとったと思うたら、いきなりガバリと机に突っ伏してガタガタと落ち着かない。
朝練の時もそわそわしとったし、何やにやけとったし。正直に言うたら、キモい。ほんま、なんやねん。

「はぁ〜。なぁ、白石。これって現実やんな?」

挙げ句にこれや。
もう朝から何度も、「夢やないよな?」とか、「俺、生きとるよな?」とか、休憩時間の度に聞いてくる。
めんどくさくなってきたけど、仮にも親友なわけやし毎度丁寧に答えてやる。

「せやで。現実やんな。その証拠に、……ほら、痛いやろ?」

ただ答えるのも飽きたから、笑いながら思いっ切り頬を抓ってやった。

「いだだだ! でも痛いっちゅーことは、やっぱ現実なんやなぁ」

痛む頬をさすりながら、またニヤニヤし出す謙也。
……ただのマゾの人みたいやで。
自分がやったこととはいえ、少し後悔した。

「今日はどないしたん? 朝から浮かれとるけど、いいことでもあったか?」

ずっと聞いて欲しそうにしてたけど、敢えて聞かんでおった。けど、そろそろ限界や。俺が。
俺の言葉に待ってました! と
言わんばかりに、目を輝かせる。

「あんな、俺、ずっと内緒にしとったんやけど、2年になってすぐ、好きな子ぉが出来たんや」

あ、聞き耳立てとった女子が、めっちゃ驚いた顔しとる。なんや泣きそうな顔しとる子も居るわ。あの子、謙也んことが好きやったんやな。本人、全然気付いとらんけど。
てか、俺も知らんかったわ。約1年間、黙っといたんか。そない素振りも見せんと、顔に出やすい謙也が、よお隠し通したな。

「そうなんや。で?」
「おん。初めは見とるだけで満足しとったんやけど、その内独り占めしたい思うようになってな」

謙也が、そんな独占欲強いなんて初めて知ったわ。
きっと謙也かて知らなかったに違いない。その子のことを好きになって、初めて覚えた感情なんやろな。

「ずっと耐えてきたんやけど、ついこの間、そいつの幼なじみっちゅー子が入学してきて。俺とは違う意味やけど、そいつんことがめっちゃ好きで。しょっちゅう引っ付いとんの見てたら、カーッときてもうて」

……なんや、やな予感がする。もしかして謙也の好きな子ぉて……。だから、誰にも言えんで黙ってたとか。
いやいや! まだはっきりと分からんし、決め付けたらあかんわ。

「昨日、部活がなかったからそいつんこと呼び出して、俺の気持ちぶちまけたんや」
「へー、それで?」

聞かんでも分かるけど、聞いて欲しそうにしてたから続きを促してやる。

「初めはびっくりしてたけどな、そいつも俺んことが好きやったて言うてくれてな。めでたく恋人同士になれたっちゅー話や!」

あ、謙也んことが好きだった子ぉが、泣きながら教室飛び出して行った。
結構勢い良く出て行ったから、謙也もびっくりしとるわ。「どないしたんやろな?」て、ほんま気付いとらんかったんやな。モテたいモテたい言う割には、鈍いやつや、謙也は。
しかしまあ、あれや。
ずっと片思いしとった相手と両思いになれたんや。ちょおうざかったけど、夢かて疑う気持ちも分からなくもない。それは、しゃーないから許したる。
今、幸せいっぱいなんやな。恋が実って良かったな。
そうちゃんと、祝う気持ちかてある。
でもな、ついつい思ってまうんや。俺より先に恋人作るなんて、謙也のくせに生意気や! て。
幸せそうな顔を見てたら、なんとなくムカッときて、パシンと一発、頭を叩いてやった。




俺の予想通り、謙也の恋人が可愛い可愛い後輩、財前だったと
知るのは、数時間後。
取り敢えず、財前が幸せそうに笑てくれたから、よしとする。
謙也。
財前んことフったら、承知せんからな。
そん時はどうなるか、……言わんでも分かるよな?


END

(C)確かに恋だった


 
 

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