第2回謙光祭
□苦笑い
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4.苦笑い(謙也+ユウジ)
今コートで華麗なラリーをしてるんは、マイスイートエンジェル、小春。テニスをするその姿は、まさしく天使!
小春は、地上に降りた最後の天使や!
「「ああ。ほんま、めっちゃかわええ」」
一言一句、ハモった言葉に声がした方を見れば、そこにはびっくりした表情を浮かべた謙也が居った。
「なんや謙也! 小春はやらんで!」
「いらんわ! 何で俺が、小春を貰わなあかんねん!」
「なんやとー! 小春のどこが不満なんや!」
「どっちやねん!」
小春が貰えんなら、地獄に落ちてもええわ。もっとも、小春は俺んやし、俺は小春のもんやけどな。
「せやかて謙也、今小春んこと、めっちゃかわええ言うたやんか」
「はあ? 俺がかわええ言うたんは、光んことや」
財前光。生意気な、1つ下の後輩は、謙也の彼女(笑)だったりする。
そういえば、今小春と打ち合ってんのは、財前やったな。
「財前〜? あない生意気で毒舌なやつの、どこがかわええねん」
髪の毛だけじゃなくて、その性格もツンツンしとる。よく小春が財前のこと、「光はツンデレさんね。ほんまかわええわ〜」なんて言うとるけど、あれはツ
ンデレやなくてツンツンやろ。デレなんて、見たことあらへんで。
謙也は何で、財前なんか好きなんやろ? 小春のが可愛くて優しくて、はっきり言って財前とは雲泥の差や。
「謙也。お前、マゾやったんやな」
「いきなりなんやねん。どっちかってぇと、俺よりユウジのがマゾやん。あないに小春から邪険に扱われて、それでもめげずにアタックして」
ふ。謙也もまだまだ甘いわ。小春のあれはな……。
「照れ隠しやねんで。ほんまは俺んことむっちゃ好きなんに、照れてまってついついあないな態度取ってまうんや」
「ユウジ……、お前、幸せもんやな」と呟かれた謙也の言葉は、聞こえなかったで!
「やって、財前、彼氏のお前にも冷たいやんか。あいつ、デレる時あるんか?」
恋人にも容赦ない毒舌を吐く財前。付き合ってるて知らなければ、仲悪い思うで。
「あれこそ照れとるんや。ユウジもお得意の観察で、よお見とき。毒吐いた後、実はこっそり落ち込んどるんやで。それに、2人っきりん時は、めっちゃ甘えてくんねん」
うわ〜。甘える財前とか想像つかへんわ。あれやな。デレは、謙也専用なんやな。
「でも、たまに心折れへんか?」
いくら照れ隠し言うても、俺やったら毎日心折れまくりや。謙也と違うて繊細やから、俺。
「うーん、そりゃたまには折れるけどな」
目線はコートの財前に釘付けのまま、考え考え喋る。あ、やっぱ折れるんや。
そうやろな。せやのに別れへんとか、やっぱ謙也、マゾやったんやな。
「でもな、」
続いた謙也の言葉で、こいつはほんまに財前が好きなんやって、思うた。
例え、どんなに冷たくあしらわれようとも、側に居りたいのは。
「そない光も可愛くて堪らんのや」
慈しむように、コートの中にいる財前を見つめる。
「……謙也、お前ほんまにアホやな。まあ、俺もたいして変わらんけど」
普通にモテるのに、同性で扱い辛い財前なんかに惚れてもうて。
お前、もう一生、普通の恋愛出来ひんで。
俺の言葉を理解したんか、苦笑いを浮かべた謙也は、それでも幸せそうに見えた。
END
(C)確かに恋だった