恋愛小説

僕ガ彼女ヲ殺シタ
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僕は彼女に手を差し伸べることもなく、

虚ろに…だけどある種の達成感で以て、

その様子をただ見ていた。







驚きとおそらく恐れのために

見開かれたままだった沙羅の大きな瞳は、

少しずつ輝きを失いながら、

それでも自分の現状を受け容れるべく、

後戻りが出来ない事を悟ってからは

優しく細められつつあった。





沙羅「あり…が…と……星牙…」





聖母マリアが受胎告知された時、

こんな微笑みだったのではないだろうか。

全てを許し、全てを愛し、

そして全てを失う。







彼女は、その命の灯を消そうとする僕に、

本心の感謝の意さえ表した。







呼吸がより小さく、痙攣がより大きくなり、

それでも安らか過ぎる笑顔で

彼女はこの世での業を終えた。





星牙「……」





涙を流すことすら出来なかった。

彼女のために泣いてやることすら出来なかった。







ただ呆然と亡骸へと変わっていった沙羅を、

見つめることしか出来なかった。










今日、僕は彼女を殺した。




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