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□手と手繋いで
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俺は、休み時間には本を読んで過ごして、放課後はさっさと家に帰ってテレビゲームがしたいのに、用事があると説明しても頼むからほっといてくれと言っても、何回も誘ってくる。

東京から来た俺がそんなに珍しいのだろうか。

確かに、この村でポロシャツを着てる子供は俺しかいないけど。

「いつ空いてるんだ?一緒に遊ぼうぜー」

「遠慮しとく。」

「なんだよぉ、絶対楽しいのに…。すっげえ珍しい蝶とかいるんだぜ?」

「!……ふーん」

「まあ、気が向いたら来てくれよな。6時くらいまでは森にいるからさ!」

こいつはそれだけを言うと、また走り出してしまう。
そのあとを、取り巻きが文句を言いながら慌てて追いかけていった。

また耳障りなセミの声が頭に響き始めた頃、俺はさっき言われたことを頭の中で考えていた。


『すっげえ珍しい蝶とかいるんだぜ』……。


正直、凄く興味がある。

俺は虫はそこまで好きじゃないけど、蝶は大好きだ。
蝶関連の本を5冊は持っているし、去年の誕生日には父さんにムラサキアゲハの標本を買ってもらった。
だから、さっきのあいつの誘いは物凄く楽しそうだったのに、俺のプライドが許さなかった。

田舎のガキ臭いやつと遊ぶなんて、っていう小さなプライド……。



騒がしい学校が終わり、家に帰ってテレビゲームをし始めた俺だったが、集中出来なくて20分もせずに電源を切った。
気になるんだ、あいつらが今どうしてるか…蝶を捕まえられたのか。
ほんとは5時を回ってしまった今からでも行きたいのだが、のこのこ行くと「やっぱり来たのか〜」とかにやにやしながら言われそうで、嫌だ。
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