Main
□本当の君
2ページ/3ページ
周りを見渡すと、30メートル程先に既に俺以外のみんなが集まっていて、声をかけようとした時に俺は驚愕のあまりビニールバッグを落とした。
「じゅ、じゅだっ、じゅうだいっ!!???みんなに羽根見せていいのか!?」
十代の背中には、確かに2つの小さな羽根が生えていたのだ。
俺のすっとんきょうな大声に十代を含めみんなが振り向き、「はあ?」と言いながら近付いてくる。
「だだだって、十代の背中に羽根が………………あれ………………???」
十代の上半身を近くで見ると、さっきは何も着ていないと思ったのに普通にTシャツを着ていた。
「え?だって、さっき……」
「ああ、これか?」
十代が後ろを向くと、そこには確かに小さな羽根があった。
ただし、プリントされた…。
「このTシャツ、ベージュっぽいからなあ〜。ヨハン、俺の背中に羽根が生えてると思ったのか?」
ニヤニヤと笑う十代の周りで、みんなが腹を抱えて笑っている。
「だ…だって、十代は天使じゃないのか?」
俺の言葉に一瞬しんと静まり返り、一拍置いたあと先程より大きな笑い声が空に吸い込まれた。
「あはは!俺、そんなこと言われたの初めてだよ!」
「アニキが天使みたいに可愛いのはわかるけどね〜」
「て、天使って!おとぎ話の話だろう…くくっ…」
「やっぱりヨハン先輩はメルヘンの国の王子さまだドン!」
俺の顔が熱いのは、照りつける太陽のせいだよな、うん。
「うっ、うるさい!!!俺先に泳いでるから!」
笑い声を背に、俺は逃げるように海へ走っていって勢いよく飛び込んだ。
天使だと思ったんだけどなあ……