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□Admiration…?
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周りの女子生徒を見ると、みんなうっとりとした顔でヨハンを見ていて、十代は少しだけ嬉しくなった。
昔から、十代にとってただ一人の姉であり自慢の友達。今もヨハンはそう思ってくれているだろうか…。
ヨハンの挨拶が終わり、壇上を降りているヨハンをじっと見つめていると、ヨハンが一瞬だけこちらを見た。
「(あっ!)」
しかし、直ぐに目をそらされてしまう。
「(気付かなかったのかな…)」
心に不安を残しながらも、入学式は無事終了し、その日学校にいる間はヨハンを見かけることはなかった。
皇ヶ咲学園は全寮制で、例外なく十代も今日から寮生になった。
普通のマンションよりは安く住めるのに、小さなコンビニまで寮の中に入ってしまっているので驚きだ。
今の時刻は5時。夕飯までは、充分に時間がある。
「それじゃあ、皇ヶ咲学園での初風呂といきますか!」
そう言って、十代はいそいそと入浴の準備をし始めた。
十代は昔から風呂が好きで、朝から銭湯に行くこともしばしば。
ヨハンと仲が良かった頃は、よく二人で行ったものだ。
そんな十代が、入学案内のパンフレットの隅に小さく載っていた大浴場の写真を見て、興味を持たないハズがない。
長い廊下を歩いて広い脱衣場に入ると、1つだけカゴが埋まっていた。
「一番だと思ったんだけどな…」
少し残念に思いながらも、脱衣場に一人なのをいいことに大胆に服を脱ぎ、タオル一枚だけを持って浴場に入った。
中は明るくて広々として、写真にはやはり劣るが、綺麗な風呂だ。
キョロキョロと周りを見渡していると、先客は入り口から一番遠い、端のシャワーで下を向いて頭を洗っている。
近すぎても離れすぎても感じが悪いと思った十代は、4つ分場所を空けたところに座る。
体にお湯をかけているときチラリと先客を見ると、なんと先客の髪は翡翠色だった。
「ヨハン…?」
恐る恐る声をかけると、先客はこちらを見て目を丸くした。
「十…代…?」
「ヨハンっ」
やっぱりヨハンだ!
ぱぁっと顔を輝かせ、何か喋ろうとするが上手く言葉が出ない。
嬉しさのあまりしどろもどろになっていると、ヨハンが微笑んだ。
「可愛くなったな、十代」
「ヨハンは美人だ!」
照れ隠しに少し大きな声で言うとヨハンがクスクスと笑って、十代は顔がかっと熱くなるのが分かった。
「ヨ、ヨハンがいるなんて思わなかった」
「この時間は人が来ないから好きなんだ。十代もそれを狙って来たんだろ?」
「うん…」
なんだか、先程から心臓が落ち着かない。顔も熱いままだし、気を抜くとヨハンの顔をうっとりと見つめてしまう。