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□An opportunity ver.child
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その子はリビングのソファで、両親の間にちょこんと座っていた。
「…かわいい……!」
まず、くりくりとした大きな目に惹かれ、心を奪われる。
直ぐ様その子に駆け寄ると、不安げに揺れた表情に愛しさが込み上げてきた。
「こ、こんにちは、十代です。今日からお世話になります。よろしくお願いします」
恐らく何回も練習したのだろう。台本を読むように棒読みで早口に言い、すごい早さでお辞儀した。
ヨハンは笑い声をなんとか圧し殺す。
「よろしく、十代。俺はヨハン」
手を差し出して握手を求めると十代は
たどたどしく微笑んで握手に応えた。
二人はすぐに仲良くなり、何をするにも一緒になった。
さすがにヨハンと同じ小学生には入れないので、十代はヨハンの学校と近い、市立の小学生に通っている。
学校が終わると、ヨハンが十代の小学生まで迎えに行き、毎日一緒に帰った。
食事をとるときも、長いテーブルの隅に二人くっついて食べている。
入浴ですら一緒で、いつもヨハンが十代の頭を洗ってやっていた。
「十代、気持ちいい?」
「気持ちいい!ヨハンって頭洗うの上手いよなー」
最初は十代もヨハンの髪を洗っていたのだが、泡がヨハンの目に入ってからは十代は洗うことを遠慮するようになった。
「終わったよ、十代」
十代の髪を流し終えてから声をかけると、十代はこちらを振り向き、暖房や湯気のせいで暖くなっている風呂の中に長くいるせいか、紅潮した顔でにっこりと笑って「ありがとな!」と言った。
その瞬間、ヨハンの心臓は一度大きく跳ね上がり、大きく脈打ちはじめる。
「あっ…?、うん…」
急にドキドキした理由もわからず、驚きながらもヨハンも自分の髪と体を洗い、二人で湯船に浸かった。
暫く入っていると、十代は熱くてぐったりしてきたらしく、ヨハンにぴったりと寄り添って、ヨハンの肩に頭を乗せてきた。
「じゅ、十代!上がろう!」
「え、あ、うん、?」
いきなり大声を出してすっくと立ち上がったヨハンを不思議に思いながらも、十代は後をついていく。
「ヨハン?どうしたんだ?」
「なんでもない!」
なぜか顔が熱くてドキドキして、十代の顔を見れない。
風呂から上がるとさっさとパジャマに着替え、ベッドに入った。
「ヨハン…」
そっぽを向いてしまったヨハンを心配して十代が声をかけたが、ヨハンは何も喋らない。