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□本当の君3 〜next life〜
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「ガッチャ!へへ、俺の勝ち!」

「あーくそ、負けたぁー!」

「俺に勝とうなんて100年早いぜ?ヨハン」

「30分前に勝ったけどな。」

「うるせー!」

学校が終わった後、俺と十代はレッド寮の十代の部屋でデュエルをしていた。
最近はいつもこうで、授業が終わると二人でどちらかの部屋に行って夕食までひたすらデュエル。
そこから各自の部屋に戻ってしまうこともあれば、そのまま泊まって更に徹夜でデュエル…なんてこともざらになっていた。
今日は金曜日で明日は学校が休みだからきっとこのまま十代の部屋に泊まるんだろうなー、とカードをシャッフルさせながら考えていたら、十代が思いがけない一言を言った。


「ヨハン、海行こうぜ」


思わず、シャッフルする手が止まる。
普段から俺と十代は「デュエル馬鹿」と言われていて、実際、二人きりの時はお互いに大好きなデュエルばかりしていた。
例えそこまで好きじゃなくても、この島にはゲームセンターや遊園地といったような娯楽施設が存在しないので、自然とデュエルばかりしてしまうのが当たり前だと俺は思うが。
何が言いたいかというと、十代がデュエルすることよりも海に行きたがったことに俺はかなり驚いた。
まだ日は沈んでいないが、昼間より気温は下がっていて我慢できないほど暑いわけではないのに。

「え…そんなに暑いか?」

頭にクエスチョンマークを沢山浮かべながら俺が聞くと、十代は少し笑った。

「ばか、泳ぐんじゃねえよ。ちょっと海が見たいだけ。だめか?」
十代の言葉を聞いて、ますます訳がわからなくなる。
海を“見たい”?あの十代が?
海でデュエルしたい、海で泳ぎたいじゃなくて?
聞きたいことは沢山あったが、少し首を傾けて「だめか?」なんて言われたら、黙って行くしかなくなった。

これが「惚れた弱味」ってやつだ。


 * * *


「うわぁ、夕日すげえ…」

見たことないような大きな夕日が辺り一面と砂浜に立つ俺達をオレンジ色に染め上げ、明るすぎる夕日の反射で海さえも一部がオレンジ色になっていた。

「だろ?この時間は夕日が一番綺麗なんだ。ずっとヨハンに見せたかった…」

感嘆の声を漏らす俺の隣で、十代が静かに言う。

「うん、ほんとに綺麗だ…。」

俺のその言葉を最後に、しばらくの沈黙が訪れる。
でもそれが決して気まずいわけではなく、寧ろ心地良く感じた。
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