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□ある冬の物語
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十代から指定された待ち合わせ時間の10分前にヨハンは公園に行き、一つだけあるベンチにうっすらと積もった雪を手で軽く払って腰掛ける。
時折吹く冷たい風が体を芯から冷やしたが、緊張と不安でどうにかなってしまいそうだったヨハンには寒さなど大きな問題ではなかった。
待ってる時間はいつものように携帯を弄る気になれず、十代のことだけを考えながらじっと俯いていると、公園の入口からこちらに歩いてくる十代が見えてヨハンの心臓が一度大きく跳ねた。
コートのポケットに両手を入れて、寒さからか身をすくめながら歩いてきた十代はヨハンの目の前で立ち止まった。

「よぉ…待たせたか?」

「いや、今来たとこ…」

「そっか」

十代は何の気なしに言うと、ヨハンの隣に座る。

「ヨハン、コーヒー飲むか?買ってきたんだけど」

「あ、サンキュー」

十代がコートのポケットから取り出したホットの缶コーヒーをヨハンは受け取り、冷えた指先を温めるためと緊張を抑えるためにそれを強く握った。
十代が小さく息を吐き、呟くように言う。

「寒いよな……、ヨハンの国では、これが普通なんだろうけどさ…」

「…ああ……」

「…………」

「…………」

気まずい沈黙が流れ、時間だけが過ぎていく。
息の詰まるような沈黙を破ったのは、ヨハンだった。

「………十代…」

「ん…?」

ヨハンはコーヒー缶を強く握り締め、意を決したように強い眼差しで隣に座る十代を見詰めながら口を開いた。

「十代が俺のことを振っても、俺は十代に告白したことを後悔しない。日本に来て、十代と出会えて、友達に…親友になれてよかった」

「………」

「同姓に……友達だと思ってたやつに告白されて気持ち悪いかもしれないけど、これだけは覚えておいて欲しい」

ヨハンは一旦言葉を切ると、十代の片手をポケットから出させ、両手で包み込むように握って言った。








「俺には、十代を絶対に幸せに出来る自信がある。逆に、今の俺を幸せに出来るのは、十代…お前しかいない…!」







 
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