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□前からずっと、今も、そしてこれからも
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冷たくて寂しくて凍えるくらい寒くて何も無い、真っ暗闇の深淵。

俺は未だにそこから抜け出せないでいる。





―――――――――――――




十代と出会ったのは、高校に入ってからだった。

入学してから少し経ち、クラス内にもある程度グループが出来始めたとき、俺の新しい友達と十代が偶然にも同じグループで、必然的に俺は十代とも話す機会があった。
後から知ったことなのだが、十代は人見知りするタイプらしく、俺が友好的に話し掛けたにも関わらずその時の十代の返事は酷く素っ気ないものだった。
それからというもの、俺は同じグループの中で十代に話し掛けることだけは無かった。そりゃそうだ、第一印象が最悪だったのだから。
お互いを無視している期間が少しだけあったが、やはり同じグループ、話さないわけにはいかない。
そして何回か話していくうちに…不思議なことに、第一印象はあれほど最悪だったのに俺と十代は次第に仲良くなっていった。
呼び方も、「遊城」「アンデルセン」から「十代」「ヨハン」へと自然に変わる。
お互い妙に馬が合い、それこそ何をするにも一緒になった。



それから数週間後の夏の日差しもいよいよ耐え難くなってきた頃、俺たちのクラスは一年生のみが行うクラスの親睦も兼ねての泊まり込みの行事…所謂「宿泊学習」で山ばかりの田舎に行った。
日中に行った山中散策は面倒臭いことこの上なかったが、十代と一緒だとそれほど苦では無かった。
そして夜、畳が敷き詰められていてかなり広い部屋に各自で布団をひくことになったのだが、俺はその時思ったことを今でも覚えている。

“絶対に十代の隣で寝たい”

今思えば、それは友情という想いだけから来る気持ちでは無かった。
自覚はなかったがその時には既に、俺は十代に恋をしていたんだ。



俺と十代の友情が深くなり、自覚せぬ恋心も俺の胸の中で日に日に大きくなっていた頃俺は、十代が俺以外のクラスの友達と楽しそうに話しているのを見た。
その瞬間感じた、胸に大きな何かがつっかえているような苦しさと…押さえようの無い苛立ち。
数分後に十代がいつものように俺に話しかけてきたが、俺はうまく笑顔を作ることが出来なかった。

なんで俺以外のヤツと話すんだ?
そいつといた方が楽しいのか?

どす黒くて渦を巻く、暗く大きな負の感情が生まれた瞬間だった。
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