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□手と手繋いで
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ミーン、ミーン、ミーン…
一歩外に出ると、いろんな種類のセミの鳴き声が耳につく。
うるさくて堪らない。
まだ朝の7時半なのに太陽はしっかりと照りつけて、舗装されていない土の道を一人歩く俺に汗を流させた。
しかもランドセルをしょっているせいで、背中は汗でベタベタだ。
学校に着いたら日焼け止め塗り直さなきゃな…。
そんなことを考えながら歩いていると、後ろから複数の騒がしい声と走っている足音が聞こえてきた。
それを聞いて、俺は盛大に溜め息をつく。
その足音は俺を追い越さずに止まって、走ってきたやつらの中の麦わら帽子を被ったやつが、俺に歩調を合わせて歩きながら、俺の顔を除き込んだ。
「よっ、おはようヨハン!」
「………おはよ」
「なんだぁ?元気ねーなあ」
そいつ……遊城十代は笑ながら言った。
少なくとも、こいつより元気があるやつを俺は見たことがない。
黒いタンクトップにグレーの短パンを穿き、日に焼けた小麦色の肌をしていて、髪も焼けているのか最早茶髪に近い。
何故かいつも走っていて、そして回りにはいつも人がいる。
そんなやつだ。
「はぁ、はー…アニキったら、急に走り出す、んだから…」
「ほんと、だドン…」
「貴様は、落ち着くという言葉を、知らないのか!」
こいつの取り巻き達はまだ息が整わないみたいだが、はあはあ言いつつもしっかり文句を言っている。
黒髪でつり目をしたやつの言葉に俺は激しく同意した。
「あはは、わりいわりい。なあヨハン、今日の放課後森に虫を捕まえに行くんだけど来ないか?ちなみに明日は川で遊ぶんだけど!」
「行かない」
「えぇー!?絶対面白いのに!」
俺が間髪入れずに断ると、こいつは信じられないとでも言うように俺の耳元で叫んだ。
正直、うるさい。
こういう風に、こいつは俺が転入したその日(ちょうど10日前)からやたらと俺に絡んできて、決して俺を一人にはさせてくれなかった。