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□不器用な優等生と働き者な不良
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「遊城!!!!全く…お前はロクに学校にも来ず毎日フラフラしおって、テストで点を取ればいいと言うものではないんだぞ!!!!!」
生徒指導室で、生活指導担当の教師が額に青筋を浮かべて唾を飛ばしながら十代を怒鳴った。
「へいへい…」
十代がめんどくさそうに返事をすると、それがまた教師の逆鱗に触れたようで。
「何だその適当な返事は!!大体お前は……」
まだまだ続きそうな説教に十代はため息を漏らす。
「(たまに学校に来たら、これだもんなぁ…)」
毎日学校に行かないのではなく、行けないのだ。
両親を早くに亡くした十代は一人暮らしをしていて生活費を自分で稼がなければいけないので、朝早くから夜遅くまでバイトをしているからであって、決して遊んでいるわけではない。
世間は中卒には冷たい。
だから、高校に行きながらバイトをしてなんとか学費を納め、生活している。
しかし、学校にはそれを言っていない。
理由は、小学生の頃に親戚の家で暮らしていたとき、それを知った教師が「親がいないなんて可哀想に」と溢していたのを聴いて、十代は子供ながらに傷付き、同情されることに物凄く苛立ちを覚えた。
だから、変に優しくされたり同情されない為にも、両親を亡くして一人暮らしをしていることは言わないことにした。
親のいない『可哀想な子』として見られるなんてもうごめんだ。
まあ当然のごとくそれを知らない教師には『学校にも来ずに遊んでいる不良生徒』と誤解されているわけだが。
「今度何か問題を起こしたら、進級は絶対させんからな!覚悟しておけ!!」
「わかったよ、センセー」
教師の捨て台詞にうわべだけの返事をして、鞄を持って足早に教室から出る。
すると、十代の予想だにしない人物が廊下に
立っていた。
今はどこか意地の悪い笑みを浮かべているが、見間違えようもない翡翠色の髪にエメラルドみたいな瞳。
十代がこの前偶然出た全校集会で、生徒会長として演説していた、この男の名は―――――……
「ヨハン・アンデルセンか……。」
「あれ?俺のこと知ってるんだ?」
ヨハンは十代をバカにしたように微笑む。
知らないわけないだろ、と内心苛つきながらも十代は言う。
只でさえ『優等生』が嫌いな十代は、初対面なはずのヨハンに何故か上から目線
な態度をとられて益々嫌いになった。
「先生ならまだ中にいるぜ。」
そう冷たく言い放ってさっさと帰ろうとする十代の肩を、ヨハンは掴んだ。