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□こっちを向いてよ、先生・・・
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放課後、ヨハンはその日一日の担当している授業を全て終え、『危険!』とでかでかと書いてある薬品や、人体模型、ホルマリン漬けの蛙が置いてある理科準備室の一角にあるさほど広くない自分のスペースで、3−Eの生徒に宿題として提出させた実験のレポートのチェックをしていた。

「考察が上手く書かれてない、B-。よく纏めてある、A+……」

レポートの束の厚さも大分薄くなり、そろそろ終わろうかというときになったときに、ある生徒のレポートを見てヨハンは眉間にシワを寄せ、思い切り顔をしかめた。

そのレポートには、赤インクのやや崩れた字で「先生大好き!」「先生と休みの日に遊びたいな〜」「彼女っていたことある?」「どんなタイプが好き?」「メアド教えて!」etc....
など、レポートとはまるで関係のないことが用紙の余白にたくさん書いてあったのだ。
それらを無視してレポートの内容に目を通すと、何だか見覚えがある。
勘違いかと思いながらもチェック済みのレポートをパラパラと見返すと、全く同じ内容のレポートがあった。

「遊城め…、丸藤のを丸写ししたのか……」

ハァ、と溜め息をつきつつ、十代のレポートに「D- 再提出」と書いた。

本当はZ-にでもしたいところだ。

遊城十代という生徒と、ヨハンが初めて関わりを持ったのは十代がまだ1年生の時だった。

授業はサボるわ、授業に出たら後ろを向いて喋るか寝てるわ、提出期限は守らないわの教師泣かせの生徒で、他の教師は十代のことを次第に放っておくようになったが、ヨハンは違った。

諦めずに何度も注意をし、ことあるごとに説教をした。
そして何度目かの説教の時、向かい合わせに座った十代がうとうとと眠そうにし、遂には船まで漕ぎだしたので、ヨハンは「起きろ」の意味を込めて十代の頭を手のひらで少し痛いくらいに叩いた。
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